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作品名:ARAYA 作者:ハウザー

第2回   第二章
何がどうなっているのか全く分からなかった。ただ一つ理解したのは、もうすぐ自分が殺されるということだった。その瞬間滝の様な汗と、吐き気が荒矢を襲った。
「ま、まって・・・殺さないでくれ」声を絞り出すよえにして言い放った。頬に涙が伝う感触がする。
「殺すなって言われてもねえ。こんなとこ見られちゃ誰だって殺しちゃうでしょ。」高岡はやっぱり変態だった。変態どころじゃない!残忍な殺人鬼だ!このままじゃ本当に殺されてしまう・・・。
「絶対に・・・絶対に誰にも、い、言わない。言わないって約束する。だから、わざわざ殺すことないだろ?!」最後の方はもはや怒鳴り声になっていた。ああ、結局は死ぬんだ。短い人生だったな。まだセックスもしてないのに。うわああああぁぁぁぁぁぁぁぁ。
「そんなに死ぬたくないのかぁ。まあお前はこいつとは違うみたいだし、条件飲むんなら生かすぜ。」その言葉はまるで神の救いの言葉のように荒矢の心と耳に響いた。
「何でも言うこと聞くから・・・。助けてくれ!!」もはやプライドも何も関係なく泣き叫ぶ。すると高岡は
「じゃあさ、まず俺の言うこと全部信じろ」
荒矢はうなずいた。続けて高岡は
「俺は金筋入りのゲイだ」
は?!なんだこいつ。まさかのカミングアウトかよ!俺のケツでも掘る気か?!それはそれで死ぬより辛いぞ・・・。そんな考えが一瞬で荒矢の頭を駆け巡ったが
「というのは嘘だ。」
殺意が芽生えた。高岡は続ける
「まあ、落ち着きなさい。俺はまぎれもなく増田を殺したが、こいつは人間ではない。この血を見れば解る通り、人間ではないことが解るだろう?」
確かに言われてみれば、英語教師の増田の頭からはあり得ない黒さの血が出ていた。つまりこいつは悪魔か何かだったのか?!そんな架空の怪物か何かがこの世には実在するのか?!
「人はこいつのような生き物を悪魔だとか亡霊だとか邪神クトゥルーの化身だとか色々な名前で呼ぶが、正確な名称はない。ただ、こいつらは元々人間で、何らかの要因で人間でない何かに化けるというわけさ。俺は親父の仕事を継いでいてね。こういったやつらが本性を現して人に危害を加えないように処理してる組織に入ってるって訳だ。ここまで信じられるか?」
確かにこの黒い血は人間のものとは思えないが、まるで安っぽいSF映画のような説明に荒矢は戸惑いを隠せなかった。
「でも殺したら警察とかが放ってはおかないんじゃないか?そんな話は誰も信じないだろうし・・・。」
すると高岡は面倒くさそうな顔をしてまた口を開いた。
「あのな、うちの組織は1000年以上もの歴史があるんだぞ。警察や政治を動かすのなんて簡単なんだぜ」
出たよ、歴史的権威がどーたらで片付けちゃうやつ。やはり嘘くさくなってきた。高岡は一体何なんだ。ただのイカれた殺人鬼か、世界を悪から救うヒーローなのか。
「まだ信じていないようだな。まあ、仕方ないな。金曜日の放課後に俺と一緒に行動しろ。さもなくば殺す。誰かにこのこと話しても殺す。嘘ついたって、目を見れば解るんだからな。」
荒矢は言葉もなくただうなずくことしかできなかった。
「じゃあ今日はもういいから、とっとと帰って寝な。」

全速力で家に駆け込み、リビングのソファーに倒れ込んで大泣きした。こんなに泣いたのは子供の時以来か。荒矢は自分がまだ生きてるということへの感謝と、これから自分に起きるであろう不幸を思い赤ん坊のように激しく泣きじゃくった。


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