マンションについてエントランスに入ると、ちょうど一台しかないエレベーターが閉まるところだった。
鉄のドアが閉まる瞬間、エレベーターの乗客と目があったような気がした。
ああついてない、と思いながらエレベーターの「↑」ボタンを押す。
疲れていた。
19時には帰れたのに、なんかダラダラ世間話をして、コーヒーをもう一杯入れて、やっとオフィスを出てそれから何を買うでもなく服屋なんかをブラブラ寄り道して。 今はもう20時半。
今日はまだ火曜日だ。 今週はまだ半分以上ある・・・。
6階まで上がったエレベーターが下りてくるのを、頭上の階数表示のオレンジの灯りを眺めながら待つ。
なんか、明日の朝からやらなきゃいけないことあったっけ・・・。ああそういえば冷蔵庫に飲み物ないかも、買ってくればよかった。
ゴムと、重い鉄の扉が刷れる音がしてエレベーターのドアが開いた時、パンプスのつま先が傷ついているのを見ていたから。気がつかなかった、髪の毛を掴んで引きずり込まれるまで。
シャキ、という音と共に。
自分の、こげ茶色の髪の毛と真っ赤な血液がエレベーターの床に散って、 何を感じることもできず見上げた先に、白塗りの顔の真っ赤なピエロの笑顔が広がっていた。
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