ある晴れた日の午後。 狭いけれど、角部屋で日光に恵まれたアパートの借家。一週間溜めこんでいた、細々とした洗濯物―――靴下や、ハンカチや、下着―――を一つずつ広げ、一人暮らし用の小さい洗濯物干しに下げていたときだ。
空気が澄んでいた。昼下がりの太陽の光が赤みを帯びている、そんな秋の始まりのとある週末だった。 ふと。 そう、それは何かはっきりとしたきっかけがあったわけではなく。本当に何の気なしに、廊下の先に見える玄関を振り向いたのだ。
何の変哲もない玄関のドア。 外のまぶしい光を逆光にして薄暗い玄関の、ただそこにある、鉄のドア。 そこに、薄気味悪い違和感を覚えた。
受け口のない、さらけだしの郵便差し出し口。ばねのついているはずのその蓋が、ぽっかりと口を開け、外の光を漏らしている。
目と。 差し出し口から覗く二つの目と、 私の目が、 はっきりと、 交わった。
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