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作品名:ファラボロスの虹 作者:大野原

第13回   盤踞
 敵と味方が入り乱れている、とかどちらかが包囲の態勢にある、とかいうのなら理解ができる。しかし・・・
「ファルター様は何とご覧になりますか?」
ロランドが説明しようとするのを制してサムエルが言った。
さっそく試すつもりか? とファルターは思いながら
「表面的に見れば、敵と味方の小部隊がそれぞれ谷間で包囲されて盤踞しているように見えるけど、これはいつからこの状態?」
「3日前に『小部隊』の位置がその位置に入れ替わった他は去年から変化ありません」
「そう。そうすると、盤踞しているのは大軍の方だね」
「左様です」
「では、この小部隊が王国軍?」
「左様です」
「敵軍も一枚岩ではないと言うことかな?」
「敵軍の指揮関係に乱れは見いだせません。王国軍が前面に何も手当をせずに迂回している間に1個連隊が前進してきただけのことです」
「敵の連隊に対する処置は?」
「砲撃を浴びせる他は特に何も」
「何も?」
「後方連絡線に対する遮断準備と逆襲発動のための準備までは終わっていますが、前面の王国軍が協力を拒否していますので」
「遮断していないんだ」
「今のところ傷病者の後送と食糧の補給などの使用なので、そのまま後退路に使用させようと考えています。障害化されてもやっかいなので」
「王国軍の状況は?」
「不明です」
「不明?」
「今年になってから作戦会議への参加はもちろん、いかなる情報・物資の提供も拒絶されております。我々としては独自に情報を収集して与えられた地域を防御しているだけです」
「攻勢は考えていないと言うことだね」
「作戦区域を切り直してもらわなくては攻勢は発動できません」
「考えてはいると言うこと?」
「ノイマンがいくつかプランを持っております」
「つまりは、王国軍がいなくなったところに敵が入ってきたけれど、追い出そうにも王国軍の担当地域に軍を入れる許可が出ない、ということかな?」
「その通りです」
「わかった。ここで話してても進まないね。ここから王国軍の指揮所までどのくらい?」
「王国軍の迂回路を進めば、10時間ほどで着きます」
「朝には着くね。誰か案内をつけて、1時間後に出るから」
「わかりました」
 出発準備のために《司令官室》で地図等の用意をしていると、《貴賓室》に行っていたリンとマールが入ってきた。
2人とも兵士用の服を着ている。まあ、ここでは一番目立たない服装ではある。
「マールは残っているよう言ったのに、聞かないんだよ」
「ファルター様、ご迷惑ですか?」
「迷惑も何も、夜の山道を10時間も歩くんだよ」
「だからこそ、お夜食とか毛布とか必要です」
「色々持っていくつもり?」
「はい、体力には自信ありますから」
「音が出ないように上手く荷造りするんだよ」
「はい、ありがとうございます」
マールは嬉々として部屋を出た。
「リン、何か忘れてる事ってないかな?」
「そうね。あなたが連れてきた人達、役に立ってもらったら?」
「狙撃兵達か。もともと王国軍だしね。わかった」


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