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作品名:その箱は開けないでください! 作者:矢田なれん

第2回   2
                          ◆  

 運命の八月三日を迎えた。彼女の誕生日にあたるその日はオフであるようなことを、ブログから匂わせていた。もちろん僕もその日は有休を取り、準備万端に備えていた。ネットオークションで、某宅配業者のものに酷似したジャンパーも入手していた。
 これまで数回下見のため通ったマンションへの道のりを自転車で急ぎ、手前のコンビニの前に止めておいた。目的のマンション前は、昼間でも人通りが少なく閑散としていた。僕は、なに食わぬ顔でエントランスに入り込み、素早くエレベーターへと乗り込んだ。

 心臓をバクバクさせながら、五階のボタンを震えた指で押した。エレベーターが止まると、いざ標的となる人物の部屋を目指すのだが、それは容易に探し当てることができた。呼吸を整え、咳払いとともにインターホンを押すと、「○○宅急便です、お届け物にあがりました」と明快な声を発せられた。
「はーい」と眠たそうな間延びした女の声がすぐに返ってくると、間もなくしてチェーンロックが外され、不用意にドアが大きく開け放たれた。
僕は長く垂らした前髪の隙間から、彼女の姿を正視した。ターゲットに間違いはなかった。相手にも気づかれやしないかとヒヤリとしたが、何か感づいた様子も奇声をあげられることもなかった。
 彼女は、それでも一応テレビに出ている人間かと思えるほど気の抜けた格好で立っていた。毛羽立った長い髪を後ろで一つにまとめ、着古したグレーのスエットの上下、すっぴんを隠すためだろう不恰好な大きめの黒縁メガネという出で立ちだった。
 僕は手にした小さすぎるダンボールに、我ながら少しの違和感を覚えながら、それを彼女に手渡した。胸ポケットから偽の伝票を出すと、彼女はよく確認することもなく、あっさりと判を押した。それで用は済み、内心拍子抜けしながらも「ありがとうございました」の声とともにその場を早々に退散しようとした───その時だった。

「あっ、ちょっと待って」名残惜しいかのように甘えた声で呼び止められてしまった。
「・・・な、なんでしょうか」こっちの声は、動揺してひっくり返ってしまった。
「今、電球の取替えをしてるんだけど、手が届かないから手伝って欲しいの」
 そこで断って逃げるのも逆に不審か不親切かと思い、僕は招かれるまま玄関に足を踏み入れ、あっさりと靴を脱いでしまった。用意されたスリッパを履き、彼女の後ろについて、まっすぐ突き当たりのドアまで突き進んでしまった。
 仮にもグラビアアイドルなんぞやっている女が、こんな簡単に見ず知らずの男を部屋にあげていいのかと呆れつつ、予定外の展開であり、初めて入る女子の部屋、それも相手がタレントだとか、そんな興奮で胸が高鳴っていた。
一人暮らしの女の子の部屋───きっとピンクや花柄の可愛らしい世界がそこには広がっているのだろうと勝手にイメージを膨らませていたのだが、その予想は、ものの見事に裏切られた。
 廊下の突き当たりのリビングに通されると、そこは明るい色合いのものなど、何ひとつ見当たらない殺風景な無駄に広い一間だった。  
傷のあるフローリングの部屋の中央に小さな丸いラグ、一人用の白木のテーブル、向かい側に古びた二十インチほどのテレビ(使えるのか?)その左にカラーボックスがひとつだけ置いてあった。目に付く家具、家電はそれくらいで、壁には絵もなく花の一つも飾られてなかった。
グラビアアイドルといっても売れっ子でないと生活も、これほど貧窮しているものなのかと、ちょっと不憫にさえ感じてしまう有様だった。

「配達屋さん、これなんだけど」
 目の前の片桐は、僕を怪しむ様子もなく、あっけらかんと天井を指差した。確かに女の子ではちょっと届かない高さに、シーリングライトがあった。
「なんとかカバーは外せたんだけど、電球までは届かなくて」
 なるほど。ライトの下にはミニ脚立が精一杯のばされていた。渡された新しい円形の電球を手に、早速僕は脚立にのぼった。
天井は予想より高く男の僕でもギリギリの高さだった。なんとか古い電球と新しいのを付け替え終え、脚立から降りると、まるで生還した宇宙飛行士でも迎えるかのように、彼女は小さく拍手し握手を求めてきた。
「お礼に、お茶でもしていきませんか」
 まるで最初から用意していたように、腰を下ろしたとたん、テーブルにティーポットと二つのカップが並べられた。すっかり調子が狂いながらも、一杯だけお茶によばれていくことにした。
 彼女がキッチンに行った間に、気が抜けたのか一息つき、目の前のカップに口をつけた。アップルティーだった。そのほどよい甘さが心地よく、罪の意識さえ鈍らせてしまいそうだった。戻ってきた彼女は僕の正面に座り、不躾に人の顔を下から覗き込んできた。僕は思わずカップで顔を隠そうとした。
「おかしなこと、聞いていいですか」
 その一言で、一気に全身に緊張が走った。
「・・・あなた、巻村くんじゃない? 中学で一緒だった巻村陽一くん!」
 う゛っ。動揺でカップを床に落としかけた。
「うなじに一つ大きなホクロがあるの、覚えてたんだよね」
 そう勝ち誇ったように言われ、慌てて首の後ろに手を回した。
「でも、わざわざ私に会いに来てくれたわけじゃないわよね」
 僕がまだ白状したわけでもないのに、片桐はわざとらしくも寂しそうに俯いた。   

「・・・これ、何だろ?」
 さっき受け取ったばかりの小さなダンボールをテーブルの下から取り出すと、顔の横で軽く振ってみせ、ためらいもなく中身を取り出した。
「わぁ、かわいい。ねぇ、これって、ファンからの誕生日プレゼントかな? 」
 金のリボンをかけた真っ赤な箱に歓声を上げる片桐に、僕はつい前のめりになり、「その中は開けないでくれ」と反射的に叫んでしまった。
「なによ、これ、あなたからなの?」
 今度は僕からの好意の品と勘違いしたのか、嬉しそうに顔を近づけてきた。僕は相手に視線を合わせられないまま、その箱を奪い返そうと手を伸ばすと、面白がって彼女は体を後ろにひねり、箱を背中に隠してしまった。
「い、いいから。それ、返してくれないか」
「あやしいんだ。私にくれたものじゃないの? ああっ、まさか爆弾でも入ってるとか?」
 図星だと言わんばかりに、ゴクリと息を呑んだ音が二人の間に大きく響いてしまった。
「ひょっとして当たってる? へぇ。でも、それも面白いかもね」
 彼女は立ち上がると、箱を持って僕の手の届かぬ場所へと逃げてしまった。
「・・・あなたが思ってるほど、わたし幸せじゃないのよ。今ここで爆死したっていいくらいにね」
 わざと箱をそうっとテレビの上に置いてから、彼女は再び僕の正面に座りなおした。
「私だって、好きで深夜に水着で飛び跳ねてるわけじゃないんだから」 
 そう吐き捨てると、急に泣き出しそうな表情を、こっちに向けてきた。
「・・・あたしね、親の借金のカタにあんな仕事やらされてるんだ。だから、稼いだお金はほとんど事務所を通して返済にまわされてるの」
  えっ・・・無意識に驚きの声を漏らしてしまった。
「あたしの両親、商売に失敗して借金抱えててさ。私が高校卒業してすぐ、二人そろって事故死しちゃった。それでも借金は残って、私はそれを返すため、拾われた今の事務所の社長の下で働かされてるってわけ」
 楽しい告白でもないのに、彼女は言いながら、はにかんだような照れたような笑みをこちらに向けてきた。
「あっ、それでね、私、あの矢崎とは家が近所だったの。うちの父親、矢崎の父親と仲が良くてね、どうせお金がらみだろうけど。小さい頃からよく遊ばされて。嫌だったんだけど、あいつ、昔からガキ大将で断われなくて・・・」
「そんな話、やめてくれっ!」
 矢崎という名を耳にしたとたん、発作的にそう叫び話の腰を折っていた。それは自分が巻村陽一である確固たる意思表示をしてしまった瞬間でもあった。
「あいつに、耳元で『大声で笑え、お前も同じ目に遭わすぞ』って囁かれたの。矢崎には逆らえなかった。あいつの怖さはよーく知ってたから。ごめんね。あたしだって謝りたかった、ずっと悪いと思ってたんだよ」
 片桐は、いつの間にか涙目になって、頭を低く下げてきた。
「じゃ、なんで、最近になってテレビで面白おかしくしゃべったりした!」
 その演技めいた姿に、騙されそうになりながらも、冷静に詰問すると、彼女は後ろに倒れこみ、手をばたつかせて笑い出したのだった。いったい何なのだ、この女は。頭がどうかしてるんじゃないのか。
「あははっ、やっぱり見てくれたんだね。まんまとあたしの一か八かの計画にのってくれたわけだ。ああやって話せば、もしかしたら巻村くん、あたしを消しに来てくれるかもって考えたの。あなたが私を今も恨んでいることを見越して」
 片桐は、そばにあるボロボロのハートのクッションに顔を押し付け、笑いを噛み殺していた。
「・・・なんだよ、それ」
 嘘か本当かわからないが、そんな話を聞かされ、何だか急に拍子抜けしてしまった。どっと疲れてきた。ここにこうしている僕は、まんまとこのイカレ女の作戦にのってしまったというわけなのか? 復讐でこらしめてやるつもりが、彼女の期待通りに動いてしまったというのか? 
 てっきりグラビアアイドルなぞやって、気楽に楽しく暮らしているかと思っていたのに、今目の前にいる彼女は目に涙を溜めて泣いたり喚いたり、狂ったように転げ回っている。僕が殺しに来るのを望んでいたと、のたまっている。
「いつわかったんだ、僕だって」
「玄関で顔を見たとき、すぐよ。巻村くん、中学の頃とあんま変わってないんだもん」
「お前が不幸なのは、よくわかったよ。あの箱は僕のだ。だから返してくれ」
 これ以上話をしていても、何をしでかすかわからないので、さっさと箱を取り返して退散しようと立ち上がると、彼女もすかさず手を伸ばし、テレビの上の箱をつかんだ。
「なによ、私へのプレゼントでしょ? どうしようと私の勝手じゃない」
 不信がるその表情は、面白がるように微笑んでもいた。そして試すかのようにリボンを解いた。 
「よ、よせ、開けないでくれ、お願いだ!」
 僕は彼女の体を後ろから押さえ込み、必死に奪い返そうとした。しかし、彼女は箱を離さず胸に抱え込んで離さない。僕の手を逃れ、キッチンの奥へ身を隠してしまった。僕の尋常でない汗と荒い息、必死な表情で、彼女はもはや中身が爆弾なのだと確信を持ってしまったようだった。
「安心して。何かあっても巻村君のせいにはしないわ。私が望んでやったことにするから」
「なに言ってる、何も起こりはしないさ。さぁ、早くそれを返してくれ、片桐」
 今度は、巣穴に隠れてしまった動物をおびき出すかのように、すがるような甘えるようなやさしい声色で懇願してみる。
いやいやをして駄々をこねる子供のように身をよじりながら、のそのそと姿を現した彼女は、箱を大事そうに抱えながら、僕との一定の距離を保った。
 僕が迂闊に手を出さないとわかると、箱を目の高さにあげ、何かに憑かれたような視線で捉えながら、一度こちらに安心させるかのような微笑を投げかけたかと思うと、今度はきつく目を閉じ、箱のふたを勢いよく開けたのだった────

                          ◆   
  
 どれくらいの時間が経過したかは把握できなかった。それでも少しの間、気を失っていたのは確かだった。
自分はいま床に倒れている状態なのだろうとぼんやり認識しながら、ゆっくり目を開いてみた。視界は真っ白な煙で覆われ、まるで自分の頭の中を見たような気分だった。その中に微かに火薬のにおいがした。ああ、やはり爆発は起こってしまったのだと、それで確認はできた。
 果たして二人とも無事だったのかと思いながら、慎重に手足を動かし起き上がろうと試みる。幸いどこにも痛みはなく、すぐに体を起こせた。煙は天井まで充満しているのか、立ち上がっても何も見えないままだった。
「片桐、どこだ、返事をしろ」
 煙にむせながら、部屋にいるはずのもう一人の名を呼んだ。彼女が箱を開けてしまったのだ。まったくの無傷で済んだかどうかは怪しかったが、とにかく彼女をさがした。煙をかき分け、とりあえず前に進むと、腰の辺りがテレビの画面らしきものにぶつかった。
その逆方向に彼女が立っていたのを思い出し、壁伝いにそちらへまっすぐ歩いていくと、何かに躓いた。しゃがんで触ってみて、それが人間の二本の足だとわかった。足の先から上に向かって手探りで辿り、なんとかその表情を確認しようとするが、反応もなく、煙に覆い隠されてわからないままだった。
「おい、大丈夫か!」
 伏せている体を、ようやく抱きあげ仰向けに返した、その瞬間(とき)────
不思議なことに部屋に充満していた煙が──何かの合図でもあるかのように──引潮のように速やかに部屋の隅へと引いていくのがわかった。何か妙な、良くない違和感だけがそこにゆらゆらと漂っていた。
 上半身を翻した彼女を見下ろした僕は、驚きのあまり、思わずそれを放り投げてしまった。床に打ちつけられた衝撃のためか、相手の小さな呻き声が聞こえてきた。彼女は唸りながら上体を起こし、不思議そうに辺りを見回していた。
 こちらの気配に気づくと、爪先から舐めるように僕の顔へと視線を這わせて、彼女も瞳を大きく見開かせ、鋭い悲鳴をあげたのだった。

「・・・どっ、どなたですか!」
「き、き、きみこそ!」
 まるで責任をなすりつけ合うかのように、互いに指さし合った。
「あの・・・巻村くんは、どこですか?」
 その声は、少々しわがれていたが片桐里美のものに違いなかった。だが目の前の人物は、似ても似つかない姿でしかない。
「・・・まさか、片桐なのか?」
 僕が質問しかえすと、相手は何か閃いたかのように四つん這いのまま、カラーボックスから手鏡を取り出した。恐る恐る自分の顔を映した彼女は、またも短く悲鳴をあげ、鏡を壁に投げつけた。僕もひどく嫌な予感がしてきて、割れ損なったそれを拾いあげ、自分の姿を確認した。
「こ、これは・・・いったい・・・どういうことなんだ?!」

 整形手術の後、生まれ変わった新しい自分と初対面したかのように、まじまじと自分の顔の隅々まで観察した。初めて見る顔───まさにその通りだった。それも整形どころではなく、特殊メイクかと思えるほどの見事な変貌ぶりだった。髪や眉は白く薄くなり、顔の余計な肉はそげ、目は落ち窪み、目尻と口角には細かいしわが幾重にもでき、頬はこけ、肌は全体的にカサついていた。
 一体なんの悪い冗談だろう。何がなんだかわからないが、僕と片桐は、箱が爆発したほんの短い間に二十代のピチピチの若者から、白髪頭の皺だらけの老人に成り代わってしまったらしかった。まさか、浦島太郎のように玉手箱でも開けてしまったとでもいうのか? 
あの箱を売っていた老婆・・・あれが竜宮城の乙姫とでも?!
 片桐が泣きじゃくっている間に僕は全身くまなく調べた。どこもかしこも皺くちゃで筋肉もそげ落ち、腕も脚も骨と皮のように痩せ細っていた。
これと同じ変化が片桐の身にも起こっているはずだった。現に、彼女の長い髪はきれいに白く細く変わり素麺のようだった。スエットからのぞいた足首の薄い肌からは青白い血管が浮き出ていた。
 僕たちの白煙で覆われた視界は、もうすっかり澄み渡っていたが、僕らの身に起こった奇怪な現象の靄はまったく晴れないままだった。

                           ◆

 ハートのクッションを胸に抱き、泣き続ける片桐。壁にもたれ、悪夢が醒めるのをじっと待っている僕。いつしか二人の間に、境界線のように西日が差し込んでいた。
 片桐にスポットライトが当てられたように日が差すと、彼女に変化が起きた。突然立ち上がり今の今まで泣き腫らしていた人間とは思えぬ、明るく高らかな笑い声を上げ、部屋中に響き渡らせた。
「あーあ、どうせなら大爆発して、全部吹き飛んでしまえばよかったのに! なによ、この中途半端なザマは! 」
 クッションを床に叩きつけると、怒り狂ったようにそれを何度も何度も踏みつけた。
「死ぬことなんて出来なかったさ、もともと火薬はそれほど多くなかった。でも、まさか箱を開けたら煙にまみれて老人になるとはな。これじゃ、まるで浦島太郎だよ」
 まるきり笑えない独り言に、彼女もやはり笑い返してはくれなかった。僕だって本当は泣きたい気持ちでいっぱいだった。誰かに助けを求めたくて仕方なかった。しかし、こんな姿をさらして誰が僕らの言うことを信じるというのか。
 片桐はベランダに立ち、鼻歌交じりに夕日を眺めていた。カラスが一声鳴いていくと、夢遊病者のようにそれを真似て奇声を発した。かわいそうに。今度こそ本当にイカレてしまったかもしれない。
「・・・でもまぁ、これで、ここからは脱出できるってもんよね」
 彼女は、ブツブツ何事か呟いては、一人で何度も頷いていた。
 そして、ついに行動を開始した。弱った体にうまく対応できないながらも、てきぱきと動き出し、ここを出て行くための荷物をまとめはじめた。
「ここはね、事務所に与えられた借金返済までの牢獄なの。当分は出られないと思ってた。でもこの姿なら、まさか羽田舞子だなんて誰も思わないじゃない。もうここにいる必要はなくなったのよ。しばらくは君んとこに、お世話になるからね」
 夕陽にキラキラと輝く銀髪を後ろに束ね直すと、外見に相応しい地味な服装に着替え、僕らのいた痕跡を消すかのように掃除をし、電気、水道、ガスの元栓を閉め、あっという間に、彼女のいう牢獄を脱出する準備を整えてしまった。
 その清清しい表情は、信じがたい現象が起きた現実から、もうすっかり立ち直っているかのように晴れやかだった。それを見て、急に現実からも彼女からも取り残された気分に陥った僕は、本当に置いていかれないよう、すでに靴を履き始めた彼女の背中を慌てて追いかけた。

 マンションから逃げるようにして飛び出した二人は、体力の落ちた体を動かすのに苦労しながら、なるだけ早くその場から離れようと必死で歩いた。
息の荒い僕とは対照的に、片桐の足取りは籠から逃げた小鳥が羽根を大らかに伸ばすかのように軽やかで、時折スキップまでしてみせた。
 それでも間もなくして、僕がギブアップし、タクシーを拾った。運転手は、どう見ても仲睦まじい老夫婦にしか見えぬ僕らに親切に接し、たいそう労わってくれた。


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