その頃、学校の中では私が上げた悲鳴で、外で何かが起きている事に気付いた生徒達が騒ぎ始めていた。 校庭で体育をやっていた生徒たちはみな校門に集まり始めた。 教室の中の生徒たちも、窓側の生徒は窓を開け、外の様子をうかがっている。
そして、窓から外を見ている生徒達を押しのけ、二階の教室の窓から校庭に飛び降りた生徒がいた。 真である。 真は校庭に着地すると、校門を目指した。 真は全速力で、校門にたどり着くと、校門を飛び越えた。
その先にはボロボロになりながらも、男たちに食い下がる白石と、男たちに連れて行かれようとしている私の姿があった。
真は白石にはかまわず、車に連れ込まれそうになっている私を助けに来た。 向かって来る真に気付いた男が、その前に立ち塞がろうとしたが、真はその男を難なくかわし、私を車に押し込もうとしている男を襲った。
そして、ひるんだ隙に、真は車の中に半分押し込まれていた私の身体を車から思いっきり引っ張り出し、男たちのいない所に投げ飛ばした。
真を男たちが襲い始めたが、真はそれらをかわしながら、的確に急所に攻撃を加えて行く。 白石を相手にしていた男たちも、真に向かってやってきた。 そんな頃、異変に気付いた学校が呼んだ警察が駆けつけてきた。 近づくパトカーのサイレンに、男たちは慌てて倒れている仲間を車に押し込み、逃げ去って行った。
私が意識を取り戻したのは病院の中だった。 目を開くと、私の横には真と祖父がいた。 私はベッドの上で身体を起こした。その時、再びあの光景を思い出し、私は震えた。 「怖い」 身体の震えは止められそうになかった。
「結希。もう大丈夫だから」 そう言って、祖父は抱きしめてくれたが、私の恐怖は襲われた事ではなかったため、全く効果は無かった。
「ち、違うの」 私は小さな声で、そう言った。 「うん?何がだ?」 祖父は一旦私から離れ、私を見つめながら、尋ねて来た。
「思い出したの」 「何を?」 「私、普通じゃなかったの。人と違っていたの」 私はそこまで言うのが、精一杯だった。
祖父は私の身体をもう一度抱きしめてくれた。私は何故だか、涙があふれて来た。 「結希ちゃん。何も心配いらない。結希ちゃんはそんな事で、悩まなくていい。 その話は後で、ゆっくりしよう」 真の声が聞こえたが、私の心はそんな話に気を向けられる余裕はなかった。
それでもやがて、時の流れは私の心を現実に引き戻した。
「そう言えば、白石君は?」 「ああ。あいつの怪我はちょっと大変みたいだ」 「どこの病院に運ばれたの? ここ?」 「ああ」 「連れて行って。白石君のところへ」 私は真に頼んだ。
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