そこには私達に駆け寄ってくる何人もの男たちがいた。 私はその男たちから明らかな敵意を感じた。 白石に狙われる理由があるとは思えず、男達は私を狙っている以外あり得なかった。
白石も危険を察したのか、とっさに私の前に立つ。 私の前に大きな壁ができた気がした。 でも、私はあり得ないと思った。 白石はすでに怪我をしているのだ。 ここで、人を襲おうとしているような大人たちと戦っては、さらにひどい事になる。 白石がこれ以上怪我をするのは見たくない。ましてや、殺されでもしたら。 「きゃあー。助けて!」 私はそう思うと、大声で叫びながら、白石の腕を掴み、私の横に引き戻した。 その時、白石を狙っていた男の拳が私の目の前に飛んできた。 「殴られる」 私は一瞬殴られる恐怖に襲われた。 その時、私が男の腕を握り潰したと言うあの事件の光景が、頭の中に蘇って来た。
あの時。
「ぶっ殺す!」 そう言って、あの男の人は小さな私に殴りかかってきた。 「殴られる!」 私は殴られるのが怖くて、その拳を止めようと、私に向かってきていた男の腕を思いっきり掴んだ。
ぐしゃり。
そんな音と感触が耳と手から伝わって来た。 その次の瞬間、私に掴まれた男の腕の部分は何も無くなっていた。 そして、そこから勢いよく吹き出す血は、私の顔面を生温かく、ねっとりと濡らして行った。
あれは、やっぱり私がやった事?
私はその光景が恐ろしく、首を激しく振りながら目を閉じた。 さっき、私に向かってきていた拳が当たったのかどうかも分からなかった。 目の前の男たちに対する恐怖など、有って無きがごとくのさらに巨大な恐怖が私を襲ってきていた。 私は頭の中によみがえってきたその恐怖に耐え切れなくなり、大きな悲鳴を上げた。 「きゃー!」 そして、私はそのまま意識を失っていった。
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