計画が失敗しただけでなく、持ち駒一体がまるまる政府の手に落ちた事を知り、その男は苛立っていた。 男が描いていたシナリオはこれでまた大きく狂い始めていた。
「なぜ、こんな事になった? どう考えても、こんな仕掛けが普通の家にある訳が無い。いや、ある必要がない。 報道されている事が事実で、そんなものが本当にあったんだとしたら、奴らはこう言う日が来る事を予期して備えていたと言う事以外あり得ない」 「どうしますか?」 部下らしき男がたずねる。 「そうまでして守りたいものがあの家にはある。そう言う事だ。 それなら、我々も考えがある。 力ずくではかせるまでだ。 あそこには、娘がいるはずだ。名前を結希と言ったかな。そいつをさらって来い」 「人質ですか?」 「ああ。そうだ」 「分かりました」 「あ、待て」 その指示を実行するため、部屋を出ようとした部下らしい男を呼び止めた。 「はい。何でしょうか?」 「政府側に落ちた一体が生きていたなら、厄介な事になるぞ」 「どう言う事ですか?」 「政府側につく可能性があると言う事だ。場合によっては、ここが政府側に囲まれるかも知れん。備えをしておけ」 「分かりました。ここを撤収できるようにと言う事でよいでしょうか?」 「まあ、そう言う事だ。重要な物は他の場所に移して置いた方がよいだろう。 場所は私の方で、探しておく」 「分かりました。直ちに」
部下が去った後、男はどこかに電話をかけはじめた。 「私です。困った事になりそうです。 この場所を引き払わなければならなくなるかも知れません。 新たな場所をご提供いただきたいのですが」
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