建物の玄関を開けようと、誰かが手をかけた。その瞬間、暗闇に一瞬青白い光が放たれた。 「感電しました」 真が言う。 「うむ。玄関を開けようとしたようだな」 この家の異常なまでのセキュリティモードを最大警戒に設定すると、侵入者が確認された状態で、鍵がかかった玄関のドアに触ると、高圧電流が流れるのである。そんなドアに触ってしまえばただではすまない事になる。 はっきり言って、殺人兵器だ。こんなもの普通の家にあってはならないものだし、使う事は無いと思っていた。 ここで、一人退治したはずだったが、続いて玄関で爆発が起きた。モニターを見ていた祖父はドアノブに触ったあの化け物が感電した後、吹き飛んだように見えた。 「今の爆発は何だ?」 祖父が呟いた。 爆発は周りの侵入者も吹き飛ばした。 しかし、侵入者全員を倒したと言う訳ではなかった。侵入者の内、普通の人間はさっきの爆発で片付いてしまったが、もう一人いたあの化け物は爆発の中、踏ん張って立っていた。しかも、すでに玄関は吹き飛ばされており、高圧電流と言う信じられない手段で、中に入ってくる事を防ぐ事はできなくなっている。 「来るぞ」 「はい」 二人の息はぴたりとあっていると言えそうだった。 ドアが吹き飛んでしまった玄関から中に残りの一体の化け物が入って来た瞬間、廊下の床が開いた。いわば落とし穴である。化け物は深い深い穴に落ちて行った。
敷地の中に入ってきていた二体の化け物を含めた侵入者たちはあっけなく一掃された。とは言え、二人の緊張の糸は張り詰めたままだ。 祖父は監視カメラで、辺りを細心の注意を払って、確認し始める。 「他には怪しげな者はいない。 さっきの爆発で人間の方は吹き飛んだのだろう。 化け物も2体だけで、すべて片付いたようだ」 「不審な車が道路に止まっていますが、人はいないようです」 「奴らが乗ってきた車かも知れんな。 結希を出してやってくれんか」 「分かりました」 真はそう言うと、私が隠れている地下室に通じる床の扉を開けた。
地下室は狭くはなかったが、決して居心地のいい場所ではなかったので、地下室への入り口が開けられた時はほっとした。そして、私は二人の顔を見て、さらにほっとした。 「で、何だったの?」 「あの化け物を連れた強盗だな」 「えっ!あの化け物はどうしたの?そう簡単にはやっつけられないんでしょ?」 「ああ。そこはじっちゃんと俺の頭があればね」 「まじ?本当にやっつけたの?」 「理由は分からんが、一体は爆発して吹き飛んだ。一体はこの家の中におる」 「えっ?じゃあ、どうするのよ?」 「心配するな。深い深い、上がってこれそうもない落とし穴の中だよ。 見てみるか?」 「いらないわよ。そんなの。でも、そんな落とし穴って、どこにあったのよ」 「あ、玄関を上がった所の廊下にあったんだよ」 真が平気な顔で言う。また私の知らない事をこいつが知っている事に、私は少しむっとした。
そんな会話をしていると、爆発を聴いた近くの住民が呼んだ警察が駆けつけはじめた。 パトカーのサイレンが近づき、家の前で止まった。 監視カメラの映像が映し出されているTVにはパトカーから降りてやって来る警官たちの姿が映っている。 「落とし穴に落ちないよう、行ってやれ」 祖父が真に行う。真はうなずくと、玄関に向かって行った。
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