天気のよい休日の午後、街には人も多く出ていた。 車がちらほら駐車する狭い街路樹の脇道を零人と可奈子が歩く。 何組かのカップルと行き交う二人。 今日は近くの遊園地でジェットコースターに乗り刺激を感じたり、その後に乗った観覧車からお見晴らしに街を見ながら快適に過ごした。 ポップコーンを食べながら見た晴れ渡った青空と下に広がる街はキレイだった。
二人がブテックの並ぶ歩行者の行き交う道に差し掛かった時、3人の長身でスレンダーな女子のグループが横切ろうとしていた。
その中の一人が横切る街路樹の方を見て零人に気が付くと「ちょっとあれ見てよ」というようにもう一人のスレンダー女子の手を取り促す。 その女子が零人をハッとしたように見る。さらに別の女子もつられたように零人と可奈子を見る。 最初に気が付いた女子がもう一人と短く言葉を交わす。 最初の一人を先頭に3人が街路樹の道を少し踏み込んできた。 そして、歩いてきた可奈子と零人の前を塞ぐかのように立ちはだかった。
「社長!リカコはずっとLINEで社長に連絡を取ろうとしていたのに、連絡なしで可哀そうですよ」と最初の女が零人に言う。 どうやら、先ほどのホテルのカフェでいたとき零人が携帯でLINEをしながら渋い顔をしていたことを可奈子は思い出した。
「待って!」と後ろにいたリカコと呼ばれる女が前に出ると零人を見た。
「零人、どういうことなのよ?どうして出なかったの?」
「今日は仕事だと言っただろう」と零人が言う。
「彼女にピアノの仕事をお願いするために会って面接していたんだよ」と付け加えた。
「その人は誰よ?」とリカコが可奈子の方をチラリと見る。
「中学の同級生で、先日、クルージングの船上パーテイで偶然に再会したんだよ、白鳥さんを紹介するよ」と零人が言う。
可奈子「白鳥可奈子です、よろしく」
リカコ「私は三浦理佳子(リカコ)、彼の会社の専属モデルをしているけど、零人の彼女よ!」
零人がリカコの言葉が終わるのを遮るかのように「それは違うだろう、まだ、女友達だろう」
「いつも零人はそういうけど、皆はどう思う」とリカコは二人のスレンダー女子に話を振る。
「私は黒崎蘭香(ランカ)、私もモデルをしている。リカコはレースクイーンをしていて、社長の零人の彼女だと思うわ」とランカという女子が言った。
「私は藤谷笑咲(二コラ)、私もモデルをしているけど、リカコはスーパーモデルよ、私も零人の彼女だと思うわ」と二コラという女子が言った。
二人が可奈子の前で零人のことを社長と言わずに零人と名前で呼んだのは何か意味深長であった。
「皆そう言っているでしょう」と二人の言葉に満足したリカコが可奈子にダメ押しのように言った。
「違う、違う、僕には彼女はいない」と零人が否定して見せる。
黙っていた可奈子が「関係ないわ、今日は私は彼と仕事の話で会っただけよ、それから中学の同級生だったから久しぶりで1日付き合っただけよ、勘違いしないでほしい心外だわ」と否定しながらもリカコに対抗するように胸を張って見せた。
「そう、今日はそういうことにしておきましょうか、でも今にしっかり私が彼女だってことがわかるわ」とリカコが言った。
二人のやり取りを見ていた零人はその事から逃げるように「これから僕は白鳥さんを駅へ送ってから会社に戻る、今晩リカコには連絡するよ」
「わかったわ」とリカコが言った。
2人は3人とその場で別れると3人とは逆の駅のある方向へ向かった。
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