20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ
 ようこそゲストさん トップページへ ご利用方法 Q&A 操作マニュアル パスワードを忘れた
 ■ 目次へ

作品名:反復の時 作者:くーろん

第98回   可奈子の話を聞いて考えたこと
きほどの雷雲はいつの間にか消え、星さえ見える夜空に夜景が見えた。

室人が可奈子に言った「どうして、警察に行かなかったの?」

可奈子「行けなかった、どうしても、怖かった」と言った。

室人「それでは、弐蛭幽三とか言う変態の言いなりになったのと同じだろう」

中学、高校の時の室人が知っていた彼女はこんな風ではなかった、明るい少女だった、こんな変態と異常者が住む世界に片足を突っ込んでいるような女ではなかった。室人はここで彼女と別れたほうがよいのかという迷いがよぎった。

可奈子はヘドロの悪臭漂うドブ川に落ちた女と思えばいい、その汚い汚物のようなヘドロをまとってドブから這い上がって来た彼女は昔の思っていた頃の彼女ではない。このまま別れたほうがいいのだろう。彼女の言うバージンベルトとかの弐蛭がかけた魔法とか言う話に付き合うのはコスプレ的変態の世界ではないだろうか。室人は変態には特に注意していた。変態は室人の哲学的考えからすれば人生の目的を失った者たち、堕落した者、酒とか薬とかに通じる気晴らしであるだろう。絶対にそのような生きることに対する妥協は受けいられない。
しかし、室人も自慰をしてる。しかし彼の自慰は自身の肉体に向けられる性欲を感じるという思春期の継続であり、彼自身が女を妄想したものにならないように注意していた。だから、可奈子に対しても性欲を抑えていたが、夢精までしてしまうのは、やはり彼女をどこかで性的に求めているのかもしれない。
彼が可奈子を性的に遠ざけようとしているのはアザミとのセックスの思い出が可奈子から引き離して中立的にしていた。
アザミの脚持ち上げて首尾したときはまだ何も知らずに作業としてその行為に一生懸命に取り組んでいた。アザミとは別れてしまったが、そこにはある種の完成したものがあった。室人は今までアザミを自分にとって一番の女性であったと思っていた。しかし、セックスに関してだけであり、果たしてアザミとの関係が続いたとしてもアザミとのセックスで室人は新しい世界観に到達できていただろうか。それはわからないというのが本音のところ。今の室人はアザミとは新しいものを築くことはできなかったと思いたいだけであった。そうではなかったかもしれないし、そうであったかもしれない。いつかわかるだろう、真実がどうであったか。それでも今は可奈子への思いを遂げることに精いっぱいであるべきだろう。
室人も自分自身の身体に起きつつある変化も見過ごせないことがわかっていた。自惚れとか自己陶酔から自己愛とかナルシズムからの自慰の深みに落ち入っている彼にも外からの変化が必要であった。可奈子に性的先鞭をつけてもらって新しい世界観へと至る必要があった。

可奈子の目は彼に彼女現状から救い出せる王子様になれるのは室人しかいないと言っているようにその時見えた。

室人が可奈子を正常なやり方で破瓜により表世界へと引っ張り上げる。
今の彼にはそれはできる。僕が彼女に与えることができるのはそれだろう。彼女が僕と結ばれて家に入りあの暗い過去から解放される。室人のほうは彼女から手淫される性のコントロールを受けながら性力を膨らませて行き、世界の可能性への挑戦の中で新しいものへと至る。単なる排泄としての性欲ではない。性欲という動物的な汚らしくもあるものが止揚されることを願っている。動物を汚いと言ったのは語弊がある、動物の性欲はヒトと違って無邪気である。しかし、ヒトがヒトである限り動物のように無邪気な性欲はあり得ない。

室人はそのような受け渡しのやり取りを可奈子との間できっとできると彼は思った。
それで二人は結婚して幸せな生活ができるだろう。

室人は可奈子にスカイラウンジから出て外の街を歩こうと誘った。
可奈子がそれに応じたので二人はモアを出るとエレベータで降りて外に出た。


← 前の回  次の回 → ■ 目次

■ 20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ トップページ
アクセス: 17278