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作品名:反復の時 作者:くーろん

第75回   アザミの部屋
人はなぜセックスするのか?
サラリーマンがその日の仕事を終わって居酒屋で酒を飲んで会社の愚痴を言ったりして日頃の不満やストレスを和らげようとしている姿はよく見かけるが、家で奥さんを相手にセックスをして激しい憤りを解消しようとしたりもする。セックスは人間の動物としての本能に起因しているが、動物であればストレスを解消させるためにセックスはしないだろう、その点が人間が動物とは違っているが、そこで愛と言う言葉が出てくるとすべてをキレイ事に思える。

アザミの部屋には大きなクマのぬいぐるみがソファに置いてあり、ベットがあり、壁には黒のライダースーツとヘルメットが掛っていた。

アザミの部屋に入った時にすでに室人はセックスという状況に置かれていた。

室人は初めてセックスする時の体位に拘りがあり、スタンデイングセックスに決めていた。
それを聞いてアザミは最初から難しい事を言って本当にできるのかと思ったが、彼の汚れを知らない白い肌を見た時に白い肌を汚すことへの性的衝動が起きると同時に室人にとっての性の理想の対象になるように彼に合わせるように努力することが、自分を高品質な女として再発見するという自惚れにも似た期待感が起きてきた。

すべての動物が四足でいるが、人間のみが立って二足歩行するようになった、そして、立ってセックスすることは人間の人間たる進化の最先端に立つことで、2001年宇宙の旅のようにセックスの瞬間に自分が意義深い瞬間に立てると室人は考えていた。そうは言ってみたが、どうしようと言う迷いがあった。アザミにバカにされるのではないか。うまくできなかったらアザミに馬鹿にされるのではないかと恐れから、アザミの顔を見ないように背位になるように頼んだ。

アザミは手を組んで窓に置くとバレリーナのように左脚を横にまっすぐ開脚して壁に置いて一本脚で立った。室人はアザミの左脚を支えながらアザミの身体を支えながら自分の身体の姿勢を維持しなければならなった。支えるアザミの左脚を重く感じ、自慰ではないズシリとした現実の女の重みを感じていた。
しかし、セックスでつながるとアザミが自分からは遠い他者として存在している言う実感が起きてきたが、もうここで引き返せないと言うことがわかっていた。姿勢を保つことで脚が痛い、手足の疲れも感じる。しかし、アザミのほうは頭にピンクのハンカチタオルを置くと温泉にでも浸かっていい湯だなという雰囲気だった。

室人はクライマクスの何かを求めていた。部屋の中をキョロキョロ見回したり、過去のことを捜していた。昔、中学に入学した頃に、アザミと体育館で掃除をしたときのことを思い出したりした。その時、汚れた水の重いバケツを洗い場まで、零さないように、アザミと一緒に運んだことを思い出したりした。あの時にアザミの胸のあたりを意識したことを思い出した。しかし、まだダメだ。脚が痛くてしびれる、両手も疲れで感覚が無くなってきた。室人はどうしようと言う焦りを感じた。その時、部屋の戸棚の上を見るとそこにアザミがバトンガールをしていた頃のシルバーバトンの置いてある端が見えた。

室人の尻には今でもアザミの投げたバトンの小さな青あざが残っていた。その青あざが今、尻をつねられるような感覚になった。次の瞬間に石油を掘り当てた時の一気に出るような爆発と解放感が来た。アザミは慎重にゆっくりと左脚を壁からおろして、頭に乗せたハンカチタオルを手に持った。
二人ともその後にベットに倒れ込むように横になった。アザミはすぐにそばのシーツを身体にまくと壁の方を向いてしまった。室人は呆然と天井を見ていた。

少ししてアザミの声がした。「谷田貝君、私と寝たって、誰かに自慢して話さないでね、」

室人が言った「ああわかった、今夜のことは言わないよ、」

隣に物置のような狭いスペースがありそこに長椅子が置いてあった。
室人はアザミからそこで寝るように言われた。

夜、室人が手洗いに行くので居間を通った時に、アザミはベットにいなかった。先ほどの窓のところで手をついて外を眺めているようであった。室人がアザミに眠れないのと訊いて近づいて行った。
アザミはお星さまを見ているのと言った。室人も窓から外を見た。正面には大きな配送所があり大型トラックのシャッターが4つあった。外は静かで人通り無かったが蛍光街灯が明るく道路を照らしていた。配送所の上に夜空が見え、明るさに打ち消されないように星が光っているのが見えた。
アザミがいくつお星様が見えると言った。
室人が一つここと言って窓を指刺した。
アザミも私はここと言って指さした。
じゃあ、オレはここと室人が言った。
次に二人が指さした時に二人の指が同じ星の上で重なった。
思わず、二人は手を引っ込めてしまった。
室人はいつの間にかピッタリとアザミの後ろから臀部にくっついていた。そして、さっきの興奮を感じていた。
アザミの横顔が薄闇の中で天使のようにキレイに思えた。
室人はアザミの唇をみてキスをしたいと思った。
アザミもそんな室人の気持ちを察したが、なぜか室人から目を反らして横を見てそれ以上を拒んでいるように思えた。

アザミがアタシは寝くなった、おやすみなさいと言うと、ベットに行きフトンを被ってしまった。室人もおやすみと言って隣の物置に入って行った。


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