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作品名:反復の時 作者:くーろん

第74回   中華を食べながら話
宵闇迫る街で、地下鉄の出入口に面したコンビニで、棚の雑誌を立ち読みしながら室人は時々出口から出て来る帰宅する人々を眺めていた。
近くに高速道路の入口があり車がありひっきりなしに車が走っていた。
アザミは来ない。アザミはまだ来ない。立ち読みの雑誌から腕時計に目を落とすともう9:00は過ぎて9:15分になろうとしていた。

その時、ヒールの高いサンダルにベージュのコートを着たスラリとした長身のアザミが地下鉄の出口に見えた。
アザミは立ち読みする店内の室人に気がつくとニコリと笑って手を振ってみせた。
室人が雑誌を棚に戻して、店を出ると、「待った、遅れてゴメンなさい」とアザミが言った。
それから二人で並んで人の行き交う舗道を歩きはじめた。
アザミが言った。まだ、食事してないけど付き合う。室人はああと言った。
二人は少し歩いて中華料理店に入った。あまりキレイな店ではなかった。
右の角のカウンターの席に並んで座った。
アザミがタバコを1本取り出して吸った。フッーと息を吐くと煙が強力な天井に取り付けた排風器に吸い込まれていった。

目の前にあったメニューを開いて何すると言った。餃子と頼んだ。アザミは中華丼とスープ、室人はニラレバ炒め定食というのを頼んだ。

餃子が来たので、小皿に酢を注ぐと餃子を入れ醤油とライ油と辛子をかけると、パリッと言うこげた餃子の歯ごたえに美味しいとアザミが嬉しそうに笑って、二人でグラスビールを空けた。

アザミが再び吸いかけのタバコに手を伸ばして吸い始めた時に、

室人が言った「今日は偶然に、川名さんに会えるとは、、、、」。

「よくストリップとか風俗にはよく来るの?」とアザミが訊いた。

「いや、今日が初めてだよ、ボクは、、、、」と室人が応えた。

「そう、、、」とアザミがそっけなく言った。

「一つ、訊いていいかな、、、」と室人が訊いた。

「何が、、、」とアザミが言った。

「あのう、、、日の昼間に見たことだけど、大勢の人前で全裸になるって恥ずかしくないの?」と室人が訊いた。

アザミがニヤリと笑って室人を横目で見ると、テーブルの端に置いてあった水着のアイドルが表紙の漫画雑誌を取るとグラビアページを室人の前で開いて見せた。そこには水着のアイドルが砂浜に写っていた。

「谷田貝君、ここに写っているのは演技している姿よ、このアイドルの子だってカメラの前でお腹を凹ましたりして美しく見えるように演技しているのよ、アタシも同じで昼はショーで裸で演技をしているのよ」。

室人はそう言うものなのかと思うと気が和んだ。それから話が弾んだ。最近のこと、昔のこと、アザミがバトンガールをしていたことなど、アザミはあまり自分の話はしたがらなかったが、最近、バイクに凝っていると言った。ナナハンのハーレーを買って、休みの日には海まで走ると言った。

室人もビールを飲みながら、こんなに美味しいニラレバは食べたことが無いと思え、元気が出て勢力一杯になってきた

食事が終わって外に出ると、アザミが自分の家は近所だけど来ないと誘った。これから起きることに期待しながら一緒に歩いた。
大通りの向こうに広い道路があったが夜は車が通らない。倉庫や事務所がある。そこにコンビニも一つあった。アザミはその2階に住んでいた。近所に酒屋が一軒ありアザミを見て、アザミちゃんと言ったが、特に室人が一緒にいることに怪訝そうにはしなかった。
2階に上がる時にハーレーと思われる大きなバイクが見えた。
その黒いおおきな車体にアザミが嬉しそうに手をやると撫でた。室人がなぜそのバイクに乗るのが良いのか聞くと、アザミが女の子である自分が大きな物に乗ってそれを動かしたり、操ったりすると、支配しているという快感を感じると言った。

室人はアザミに従って階段を上がりアザミの部屋について行った。


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