サナエと一緒に来ていた二人の女子が鏡部屋の家を見たいと言った。室人はあまり気に入らなかったが、サナエも可奈子も好奇心がありそうに思えたので、皆で入ることにした。仮面の掛ったドアを開くとチケット売り場があった。一人の若い女が座っており、室人がまとめてチケット代金を支払ったが、チラリと見た窓口嬢は普通でまともだったので室人は安心した。
部屋の中はたくさんの仮面が置かれた広い回廊であった。 回廊にはアニメやテレビや映画で見たことのある多くに仮面が飾られていた。昔見た馴染みのある仮面が雰囲気を和らげていたが、連なる回廊には暗い照明の一角があり、怪奇な仮面が置かれていた。 サナエが一つの怪奇な仮面を手に取り、「何て怖い顔の仮面」と言って顔にあてると怖いだろうと皆に言った。 その後、突然に、サナエが、お面が顔から取れない!!お面が顔から取れない!!誰か助けて!!誰か助けて!!と悲鳴を上げた。 皆がサナエを見て一瞬慌てた。 可奈子が「今ちょっと引っ張るから、待って」と言って、もう一人の女子と一緒にサナエのお面を顔から外そうと引っ張った。でもお面は外れない。 その時、可奈子が面をしっかり掴んだサナエの手に気がつくと、呆れながら、この手を放しなさい、と言った。 可奈子が面を引っ張るとサナエの顔から外れた。 面の下からは赤ら顔でうるんだ目でサナエが可奈子の顔を恥ずかしそうに見た。 室人が、変な悪ふざけはするなよ、とサナエにキツイ目で言った。
広い部屋の隣のコーナーに髑髏が飾られていた。髑髏は青白く不気味な蛍光で光っていた。可奈子が手を翳すと髑髏は青い光を放ちながら薄暗い部屋の壁に4人の影を浮き立たせた。髑髏の放つ青い光に3人は不気味さを感じ思わず後ろに退いたが、可奈子は一人で「ウアー、キレイ、オモシロイ」と笑いながら髑髏の上で両手を動かした。 髑髏は可奈子に刺激されたように様々な色の閃光を放ち始めた。 目を輝かせながら閃光を浴びながら笑う可奈子を見て、室人は「彼女は白い」と思ったが、いつまでも髑髏に吸い込まれるように見入っている彼女に自分の知らない彼女を垣間見たように思い、髑髏の放つ不気味さに危うさを感じると、早くや止めたらいいのにと思った。 その時に、髑髏の発光にスッカリとのめり込んでいた可奈子が自分に注がれている皆の目に気づいくと髑髏から手を遠ざけた。髑髏は光を失いあたりは暗くなった。
ちょうど4人は仮面の回廊を一巡して来ていた。そこに、次のチケット売り場があり鏡部屋への入口と書かれていた。一人の若い女が座っていた。こちらの窓口嬢も普通でまともに見えたので室人は安心してチケット代金を払った。 鏡部屋には一人ずつ入るようにと言う指示が入口に出ていた。最初に室人、次にサナエ、可奈子、それから二人の女子友達の順に入ることになった。
最初に室人がドアを開け鏡部屋に入った。部屋は全面が鏡で出来た八角形の明るい小部屋だったが、室人の姿のみが鏡の反射で何十にも増幅されて無数の室人がいるように見えた。その時、ギアが掛るような機械音がしてモーターの回転音も聞こえてきた。部屋はゆっくり回転しながら上下左右に動いているようだった。部屋が動かなくなると室人は部屋の八面鏡を触ってみた。その中に外へ出られるドアになっている壁が二つあることがわかった。一つは最初に室人が入ってきたときのものだが、どちらから出たらよいのかわからない。仕方なく、一つの壁を押して部屋から出ると彼の背中で壁ドアが閉まった。 そこは大暗室だった。大暗室の中で遠くに唯一つ光るものがあった。よく見ると、それはこの建物のドアに掛っていた暗黒を覗いたような仮面であった。室人は何も他に手がかりのないこの大暗室の中で仮面に向かって注意深く何かにつまずかないように歩いて行かなければならなかった。仮面の前に立つと、そこがドアになっていた。ドアを開くと先ほどのような八面鏡の部屋だった。部屋の中でいると何となく人の気配を感じた。無数の目が鏡の向こうで彼を見ている、それは、上からの下からも見ている。 やがて部屋は回転を初めて動き始めた。止まるとやはり二つのドアがあり一つを選ぶとその先に仮面の掛った大暗室があった。こうして何度も同じことを繰り返していたが、同じ鏡部屋と大暗室を回っているのかどうかは定かではない。 室人が時計を見るとすでに1時間近くここでいる。 室人は疲れてきて何とかここから出たいと思っていた頃に、鏡部屋のドアを開くと先ほどの窓口嬢のいる回廊に出てきた。そのあとにすぐに二人の女子友達の一人が出てきて、5分後にもう一人が出てきた。 それから待つこと20分ぐらいしてサナエが出てきた。後は可奈子だけだった。 最初に室人、次にサナエ、可奈子、それから二人の女子友達の順に入ったが出てくるのは違っている。可奈子は出てくるのに時間がかかっているのだろうと思えた。 10分待ったが出てこないので、室人が窓口嬢に尋ねた。 その女は一緒に来ていたピッケルハウゼの帽子を被ってワルキューレ風のドリアンドレスを着た少女は室人が出てくる少し前に出てきてもう帰ったと言った。
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