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作品名:四季の恋 作者:マジシャン

第1回   ハジマリノハル〜デアイ〜
「ふぁぁぁぁ〜」
通いなれた通学路を歩きながら大きなあくびをする。
周りには桜、桜、桜・・・・
そろそろ見飽きてきた気もする。
「この季節は眠くなるんだよなぁ・・」
このセリフを口にしたのは何十回目だろう、そんなことを考えながら歩いていると
バンッ!!!「いたっ!!」眠気の中で背中に走る痛み。
「どうしたどうした〜朝から眠そうな顔しやがって〜」と、笑いながら言う。
「朝だから眠いんだろ!」
「それもそうか」
心の中でまったく・・とつぶやく。
このうるさいのは加賀屋卓、幼稚園からの付き合いで親友だ。
よく先生などから「かがやたく君」などと間違われるが卓とかいてすぐると読む。
最初にすぐると読んだやつは聞いたことがない。
「最近はカップル増えたよなぁ〜」
周りをキョロキョロ見渡しながら言ってきた。
「いっつもだろ」
そっけなく返事を返す。
そんな会話をしていると学校の校門が見えてきた。
桜芽付属高校。
僕はここの学校の二年生だ。
彼女いない歴1年・・・と言いたいところだが実は2年。
中3のころ大好きだった人に告白しようと呼び出したがその人は来なかった。
よりによって春になったばかりのころのことだった。
それからというもの春は一番なじめない季節だし嫌いな季節でもあった。
「ほら!はやく教室いかないと!」そんな卓の声に時計のほうに目をやると遅刻寸前。
「やばっ!」そのかけ声と同時に二人は教室へ向かって走り出した。



キーンコーンカーンコーン
ゆっくりとしたチャイムの音。
昇降口を出ると冷たい風が吹きつけてきた。
茜色に染まった空。
「今日も無事学校が終わりましたっと」
僕は肩をコキコキとならし校門を出た。
並木の桜に夕日があたりなんともきれいな光景だった。

10分くらいたっただろうか・・そんな時だった。
「ちょっと!きみ!」
背後から女の人の声。
ゆっくりと振り返ると目の前には自分よりちょっと身長の小さい女のひとが立っていた。
「はいこれ。君のでしょ?おとしてたよ。」
差し出された手には僕の生徒手帳が握られていた。
「あ・・・どうも・・・・」
自分でもそっけないお礼だとわかった。
「私もう行くから。じゃぁね!」
それだけ言うと女の人は走って行ってしまった。
僕はただ・・ただ走っていくその人の背中を見つめているだけだった。


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