パートナーが日本への入国を拒否された頃
彼はつくば市の郊外に手作りのエステ店を持っていたが
私が風俗は嫌だと口を挟んだせいか
売り上げが芳しくなく店の売却を検討していた。
次に彼がいつ日本に戻れるか分からず
その間店を放置するわけにもいかないので
彼は韓国から在日韓国人向け裏情報誌に電話を入れて
掲示板に店舗売却の広告を出し
連絡先に私の携帯番号を指定した。
ほどなくして5,6組の希望者から電話が入り
そのうち何人かは土浦駅まで迎えに行ったり
直接店舗まで来てもらったりした。
既に同様の店を何店舗かを経営している韓国人女性や
店長だけを希望する男性や若いカップルもいたが
中に日本人男性と韓国人女性の中年カップルがおり
男性の方がそんな仕事をしている割には人当たりが良く
女性もそんな世界にいる割には純粋そうに見えたので
しばらく試しに貸す契約が成立した。
ところが一週間もたたないうちに
思うように売り上げが上がらないので
慰謝料を払えとレストランに呼び出された。
最初の印象からは考えられないような凄みのある声で
公衆の面前にも拘らず脅してくる男には心底衝撃を受けた。
「あんなに近くに警察があるんじゃ商売が成り立たねえだろ。
うちの女の子達は勝手に脱いじゃうんだよ。
1日あたり5万は弁償してもらうからな。」
横で申し訳なさそうに聞いていた韓国人妻は
普段いったいどんな生活を強いられているのか
今思うと彼女の身の上も不憫に思える。
その後の対応は韓国のブローカーを利用して
1ヶ月後くらいに日本再入国許可の出た
パートナーが引き継いでくれた。
中年男は夜中でも構わずしつこく電話を掛けてきたが
単に私が相手だったので強く出ただけで
お互い違法なことをしているせいだろう
特に問題が大きくなることもなく収束した。
後になって分かったのだが
最初から金を脅し取るのが目的だったようだ。
さて、パートナーが店を構えた場所は
非常に保守的な地域に位置していた。
その筋の人達の管轄もはっきりしており
例えば個人医院のような堅気の商売を含め
全ての業種から活動資金を得ているような土地柄でもあった。
店のあった場所は風俗店をするには悪い場所で
地元警察署から目と鼻の先でもあり
普通に考えれば悪いことはできにくい場所だし
逆に何かあれば警察からの保護も期待できると思っていた。
ある日、用心棒代とやらを払う払わないで
そこが縄張りだというその筋の男達が
店に乱入してきたとパートナーから電話が入り
心配になった私は警察の介入を要請した。
電話越しの警官には事の重大さが伝わらなかったようだったので
急いで現場に駆けつけた私は自分の目を疑った。
そこには強面の男達と共に警官数人も居たのだが
彼らはお互い顔見知りのようで
「お疲れ様」と言わんばかりに別れるとことであった。
確か当該の警察署の入り口付近には
「やくざからお金を要求されても勇気を持って断りましょう」
という大きな看板が立っていたはずなのだが。
−つづく−
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