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作品名:韓国男子 作者:御美子

第1回   Prologue
日本人にとって、ドラマ「冬のソナタ」との出会いが

韓国入門のきっかけになったように

私がそれまで意識したことのなかった韓国を生活の場と決めたのも

今の夫である一人の韓国人と出会ったのがきっかけだった。


日本で韓国の有名人と言えば

真っ先にペ・ヨンジュンの名が挙がるように

未だに彼を超える人物が出ないことからして

ヨン様が特異なタイプだと分かる。


元々、年齢に関係無く夫婦のベッドは一つ

夫婦で手を繋いで歩くのも当たり前なお国柄ではある。

そうだとしても、結婚前の男性達の行動は涙ぐましい程で

独身女性に重たい物を持たせるのは男の恥と言わんばかりに

ファッションの一部である小さなハンドバッグまで持つので

エスコートしている当の女性からも迷惑に思われることすらある。


これは、単に韓国人男性が揃いも揃ってにフェミニストだということではなく

世間体を過度に意識するという韓国社会の特徴だと言えるかも知れない。

それを裏付けるように、一旦結婚した男性達は妻への気遣いではなく

両家の両親にいかに良くする(現金を渡す)かということによって

男性の価値が決まるといった風に世間の見方もコロッと変わるのだ。


ところで、韓国に住む女性の側から見れば

社会全体が女性に対して年齢や未婚既婚の違いによって

接する態度をガラッと変えるのを実感するだろう。

こちらの方は、結婚に対する保守的な考えに起因すると考えられる。


例えば、女性が超保守的な長男の家に嫁ぐと

日本で言うところの盆暮れや法事(3代前までの先祖を毎年祀る)の際

一日中親類縁者の食事の世話に追われるという

女性にとって悪名高い風習に従わなければならなくなる。


全ての男性がその風習に負い目を感じているとは思えないが

一般的に付き合い始めて結婚するまでは

ここまでやるかというくらい女性を甘やかす。


結婚を前提に付き合っている彼女に対してなら

デートの費用は一切男性持ちで

ドアツードアの送り迎えも基本。

プレゼントは男性10に対して女性1くらいの割合だろうか。


また、韓国では結婚に際して一般的に

男性が家を用意し女性が家財道具を用意するのが理想とされる。

男性には約2年の兵役が義務づけられていることを考慮すると

男性の適齢期と言われる35歳と言えば

長い人でも勤続10年というところで

とても家を買える蓄えがあるとは考えられない。

しかし、近年は彼らの親世代が不動産投資などで財テクに成功し

このような家庭に限っては可能だと言われている。


このような背景もあって

現代の若者たちは結婚するまで親ががかりになることが多い。

しかし、結婚適齢期にもなれば、親の立場から見て

子どもの面倒を見るのに限界を感じてくるのだろう。

結婚は親が面倒を見る側から見られる側へ

立場を逆転させる絶好のチャンスであり

特に親にとっては子どもへの最後の投資にもなるので

勢い力も入ると言うものだ。


以下の話は親から援助がなかった例だ。


高校時代から親元を離れ苦学した末に

高校大学を優等で卒業し将来有望な仕事に就いたJさんは

職場の先輩に紹介された小学校の先生である女性に一目惚れし

付き合って100日目に100本の赤いバラを用意してプロポーズを試みた。

因みに小学校教諭の女性は現在結婚相手として人気bPだ。


ところが、彼女の方は慎重に考え丁重に断ってきたそうだ。

おそらく彼女の親がJさんの親の援助を期待できずに

娘の将来を心配してのことだろう。


しかしながら、そんなことではへこたれなかったJさんは

今度は200日目に200本のバラの花と共に

それまで毎日のように送った彼女へのメールと

彼の心情を綴った日記を本にまとめて彼女に捧げ

心を動かされた彼女は現在彼の妻になっている。


しかし、現実はやはり甘くない。

周囲との比較で幸せ度を測る風潮がはびこる近年

Jさんの友人達が事業で大きな収益を上げ

広々とした家に住んでいるのを目の当たりにしたりして

些細なことで夫婦喧嘩になると

奥様は彼から結婚前に贈られた本を取り出して涙ぐむという。



ところで、敢えてもう少し日本と違うところを探せば、特に長男は

法的に日本より権利が多い代わりに親の扶養義務など責任が重いせいか

子供の頃から親の期待を一身に受け、甘やかされるだけ甘やかされ

結婚後の家庭や職場にも男尊女卑の考えを持ち込む傾向が見られる。


そして、保守的路線にしっかり乗って親の期待に沿い

老齢の親に金銭的に不自由をさせないことを世間では成功と呼び

そこから外れた場合は親兄弟や親戚からも白い目で見られ

中には耐えられずに失踪したり

極端な場合は自ら死を選んでいるような気がする。


親世代の苦労を垣間見、その後の恩恵を味わった若い男性達の中には

そのような悲惨な結末を回避するために

結婚を前提とした付き合いをする段階で

慎重に女性を選択しているように思える。


若いときに財テクに成功した知人の息子は

今付き合っている女性が田舎出身という理由で

前に付き合っていた女性の方が良かったと

母親である知人に漏らしたという。


二人が結婚した場合、自分の両親だけでなく

妻の両親をも訪ねて行かなければならず

その肉体的・経済的負担を考えてのことらしい。



私のパートナーの場合、根が天邪鬼に出来ているせいもあって

結婚前より結婚後の方が寧ろ優しいくらいで

知り合いの日本人女性達から羨ましがられるのだが

これは、パートナーがある程度の年齢になって韓国に戻り

結婚出来ない男性(チョンガー)達を見る世間の冷たい目を逃れ

まがりなりにも結婚できたこと自体を幸運だと考え

一人前に家庭を持てたという安心感からきているものと理解している。



それにしても、パートナーのまめさには感心させられる。

長時間通勤の仕事帰りに私の好物を買ってきてくれたり

帰宅直後でも食事の支度や後片付けも厭わず

外出先では紫外線が大敵な私に日傘を差しかけたり

車の中でさえ直射日光を浴びないように

日除けの調節や窓の開閉をしてくれる。


食事の時には肉の赤身だけを一口大に切ってくれたり

魚の骨を除いてほぐした身を私の皿に取り分けてくれたり

果物も美味しい部分を選んで私の口まで持ってきたりと

枚挙に暇がないくらいなのだ。


今なら素直に受け容れられる彼のこうした行動も

付き合い始めた頃はこれほど細やかではなく

逆に冷たく突き放すようなことも度々で悩まされた。


例えば、今では私がその気になった時にしかしないメイクラブも

以前は彼の性的欲求が高まったからというのでもなく義務のように

また、誰に教えられたのか時間が長いほど女性が喜ぶと思い込んでいたようで

時間が長過ぎて途中で眠ってしまったことすらあった。


そんな態度から、私以外の女にも同じ様に接しているのではないかと

猜疑心すら起こって心が休まらず、実際いつも女の影がちらついていた。

                                           
                     
                                  −つづく−


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