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作品名:サイレンス 作者:ぴきにん

第97回   97
ベトナム・ニャチャン(ナトラング)。
自分のオフィスで、エドナー・ガーツは殺害された宣教師・エージェント達のファイルを見ていた。場所などが離れているにも関わらず、ほぼ同時に殺害されていた者もいた。完全な組織的犯行であった。
「一体、どこが・・・?」
ガーツは目を細めた。その時、デスクの上にあった電話が鳴る。既に真夜中を過ぎていたが、ガーツは嫌な予感がしながらも、受話器を取った。
その電話は、ダナンからだった。ローガン・ブラウンが先ほど死体で発見されたと、司令部の者がガーツに伝えた。
「死因は?」
ガーツが言った。
「糸で首を絞められたことによる、頚部圧迫による窒息死です。恐らく、後ろから絞められたのでしょう」
護衛に当たっていたMPとSOGのメンバーは、一撃でみぞおちに打撃が入り、眠らされていただけだったという。
ドアのノック音がした。ガーツは入るように促すと、LRPのウィリアム・ウィルキンソン大尉が入ってきた。ガーツはある偵察任務をLRPに課していた。モンタニヤードの村へ行き、現在の状況を確認する。
「村に新たな宣教師が、既に到着していたようです」
ウィルキンソンが、報告書をガーツに手渡しながら言った。
「何だと・・・?」
ガーツがウィルキンソンを睨みつける。ウィルキンソンは、ガーツの手元にあった宣教師たち殺害の報告書を見た。
「失礼します」
ウィルキンソンは、そのままガーツのオフィスを出る。彼は心の中で、クソと吐き捨てた。有能だったクライトマンの戦死に、ホアの戦線離脱、そして有望株だったカレッジ・ボーイ、タウバーまでもが戦死したのだ。
「何がCIAだ!」
ウィルキンソンは分かっていた。CIAがベトナムで何をやっているのかを。彼らは、暗闇で蠢く寄生虫だった。その国に取り憑いて頭を食いつくし、身体を腐敗させていく。壁に拳をぶつける。何も出来ない自分に、彼は歯がゆさを感じていた。

ガーツはウィルキンソンの報告書に、目を通していた。CIDG計画の宣教師は、1950年代から潜り込んでいた。彼らを反共の徒に育て上げ、屈強で、手がつけられない若者は特殊部隊の訓練を受けさせる。ケシを育て、アヘンを彼らに与えながら、それを売らせる。それを教え込んだのは、今回殺害された宣教師達だった。
殺害した者達の狙いは、やはりアヘン・ヘロインと見ていたガーツだったが、何かが納得できなかった。


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