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作品名:サイレンス 作者:ぴきにん

第92回   92
バリーは村の中を見回した。北爆が中止になったせいか、妙な静けさが漂っている。長老と握手を交わしていたブラウンが、バリーの元に戻る。
「君たちを、歓迎するとの事だ」
満面の笑顔で言った。
「出発は、明日の朝だろ?今日は長老が、もてなしてくれる」
バリーは、その言葉に戸惑った。隣にいたデイビスは喜んでいたが、バリーは、どうしてもその言葉に安堵出来なかった。
一行は、長老の家屋に招かれる。そこで酒を振舞われ、宴が始まった。バリーは、殆ど酒には手をつけなかった。
夜が訪れ、デイビス、ヘイズは無防備にも眠り込んでしまっている。バリーはナイフとピストルを手に取り、そっと起き上がった。見るとブラウンとガーツ、長老の姿が見えない。足音を立てないように家屋を出る。月明かりが村を照らすが、人の気配が感じられないほど静かな村だった。
バリーは、村の奥に足を進めた。家屋に身を隠しながら、ゆっくりと進む。村の家屋が途切れると、一面の広い草原に出た。その草には、真白な花が咲き乱れている。全ての花が綺麗に手入れをされていた。何かの畑のようだった。その花を一つ取り、月明かりに照らしてみると、その花が何の花か理解した。
「ケシの花・・・!」
麻薬である、アヘンの原料となる花だった。
バリーは何かの気配に気付く。ケシの花の中に、身を隠した。見ると、木製のバリケードにあるドアを通り、ライフルを持った二人の男たちが、ケシ畑の奥から出てきた。
その男たちが通り過ぎるのを待ち、彼らが出てきたドアに入った。
バリケードのドアを通り抜けると、目の前には人が住む家屋とは程遠い、巨大な家屋があった。村の家屋とは造りが全く違い、全てがコンクリートで出来ている。辺りには甘い匂いが漂っていた。窓からは明かりが漏れ、何かの機械音が響く。バリーはそっと家屋の壁に張り付いた。ゆっくりと窓を覗く。
「これは・・・!」
バリーは、その光景に息を飲んだ。中では、花が落ちた後の果実に傷を付け、その集めた樹液を煮詰めている。奥にはガーツとブラウン、村の長老が山のように積み上げられた白い袋を前にして、何かを話している。
その時、撃鉄を引く音がバリーの背後で鳴った。
「迂闊だったな」
ヘイズの声だった。
「あんたともあろう男が、簡単に背後を取られるとは・・・」
バリーは両手を上げる。
「お前は、知っていたようだな」
バリーが言った。
「ひざまづけ!」
ヘイズは銃口をバリーの背中に強く押し付けた。バリーはゆっくりと膝を曲げる。
次の瞬間、バリーが目の前から姿を消し、気が付くとヘイズは強烈な吐き気に見舞われた。バリーはヘイズのみぞおちに当身を繰り出していたのだ。
「そこまでだ!」
ガーツとブラウンが構えるピストルの銃口が、全て自分に向けられている。
「おとなしく、酒を飲んで寝ていれば良かったものを」
柔和な笑顔を浮かべていた神の使いであるブラウンが、今は悪魔のような笑みを浮かべていた。


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