リーダー格の少年は何度もバリーに挑むが、彼は息一つ乱すことなく、少年を投げ飛ばした。少年達は結局恐れをなして、その場から逃げ出してしまった。 「大丈夫かい?」 バリーが倒れていたジョージに近付き、手を差し伸べた。ジョージはまだバリーの技に驚き、彼の手を掴みながらも、言葉を失っている。彼がようやく言葉を取り戻した第一声が「凄いな。何ていうんだい、あれ?」だった。 バリーは答えた。 「ああ、あれはニホンの護身術で"アイキドー"っていうんだ」 「"アイキドー"?」 バリーが7歳の時、街の郊外に一人の日本の老人が住み着いた。その老人は長い白髪に長くて白い髭の老人で、バリーは彼を"魔法使い"と呼んでいた。"魔法使い"はバリーを一目見るなり自分の背丈程の少年に、片言の英語で"アイキドー"を教え始めた。バリーにその才能を見出したのだ。 "魔法使い"は三年の間バリーに"アイキドー"を教え込むと、忽然と姿を消してしまった。 「"アイキドー"なんて、初めて聞くよ。ボクシングとか、そんなのじゃないんだね」 「僕もよくは知らないんだ。"魔法使い"は"攻撃を止める術"なんだって言ってた」 家路に着いていた二人は立ち止まり、ジョージはバリーに礼を言った。 「今日はありがとう。まだ名前、言ってなかったね。僕はジョージ・スピラーン」 そう言うと、ジョージはバリーに握手を求めた。 「知ってるよ。君のこと」 一瞬、意外だという表情を浮かべるジョージ。 「バリーだ。バリー・タウバー」 そう言うと、バリーは満面に笑みを浮かべた。それを見たジョージも、同じような屈託のない満面の笑みを浮かべた。 バリーの父親はこのアーチファクト郡という小さな街の検事だった。彼はユダヤ人であったが、クー・クラックス・クランと密接な繋がりがあると噂されていた人物だった。地理的には小さな郡だが、ミシシッピーで最もクランの暗躍が激しいこの街で、彼はユダヤ人でありながら検事として当選した。その事から、父親のジョナサン・タウバーは恐れられる存在となっていった。 バリーはそんな人種差別主義者である父親を、酷く嫌っていた。 バリーとジョージが出会ったあの日、ジョージは彼にこんなことを聞いていた。 「どうして僕を助けたんだい?」 その言葉の中に、自分を助けることは、街の人全てを敵に回してしまう可能性があるという意味を含んでいた。 「僕はこの街が嫌いだった。ここに住んでいる人間も。だけど、スピラーン神父が来て、思ったんだ。この街が好きになるかもしれないって。それに・・・」 言葉を詰まらせたバリーが照れながら、自分の頭を掻いた。 「それに、君と、友達になりたかったんだ」 その日以来、二人は親友になった。
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