女を連れ、三人は偵察地点まで歩いた。ジャングルの木々が空を覆っていたものの、そこには運搬用トラック、NVAどころか、人間さえもいない村だった。その村を見た瞬間、女が何かを叫びながら村へ走り出す。 「おい!」 クライトマンが、女の後を追う。バリーとホアが彼を止めようとするが、構わずジャングルを出て、村へ入った。 「ホア、援護を頼む!」 バリーはホアにそう言うと、ジャングルを出て二人を追った。ホアは村を見渡せる木に登り、背負っていたCAR15にスコープを手早く取り付けると、木の幹を土台にして、バリーとクライトマンを援護できる射撃体勢に入った。 女は何かを叫びながら、ある家屋に入った。クライトマンがそれを追う。バリーは警戒しながら、二人に続いた。その家屋に足を踏み入れた瞬間、バリーはむせ返るような血の匂いに、吐き気を覚えた。そして立ちつくしている二人の隙間から、血だらけになった、無数の人間の肉塊を目の当たりにする。 「これは・・・!?」 バリーが鼻を腕で覆う。 女は呆然とするあまり、足の力が抜け、膝をつく。 「ホーリィ・シット!」 クライトマンの拳が、怒りで震えていた。ここで死んでいる者達は、恐らくこの女の家族なのだろう。中には10歳くらいの少女が、裸のまま腹を割かれて死んでいた。 「ここは危険だ。身を隠すぞ」 バリーがクライトマンの肩を叩く。だがバリーの制止も聞かず、クライトマンはCAR15を手に構え、外に出た。彼は、近くにあった他の家屋に入る。バリーは後を追った。その中も、同じような惨状だった。クライトマンは、村の中に入り込んだ。バリーは警戒し、全神経を集中させながら、彼を追う。村の中心で、クライトマンが立っている。バリーは彼に駆け寄った。 「大丈夫か?」 バリーがクライトマンの背後で囁くが、彼はまた呆然と立ちつくしていた。バリーは彼の背後から覗き込むと、その光景に息をのんだ。 「そんな・・・!」 村の道に、数十人の人間が転がっている。中には耳と舌が切り取られている者、銃で撃たれた者や、ナイフで刺されていた者もいた。 「ジェノサイド(虐殺)だ・・・」 バリーが呟いた。 「サージ(曹長)、ここを離れるぞ!」 バリーはクライトマンに言うが、彼の耳には届いていなかった。 「フランク!」 その声に、クライトマンが反応する。我に返った彼はバリーを見ると、CAR15を握り締める。 「ここは遮蔽物が少ない。一度引こう」 バリーの声に、クライトマンが頷く。二人がジャングルに戻ろうとした時、彼らの後方で何かの声がした。二人は背後を振り返ると村の向こうから、数十人のNVAの兵士と二台のトラック、その後にはIS-2・スターリン戦車が村に入ってきたのだ。 二人は咄嗟に、近くにあった家屋に隠れた。ホアは登った木に同化するように、息を潜めた。NVAの兵士たちは、何かを話している。ホアはそれを聞き漏らさなかった。
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