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作品名:サイレンス 作者:ぴきにん

第8回   8
ジョージの父親、シネイド・スピラーンは、二年前にこの街へと赴任してきた宣教師だった。彼の使命は誰もなろうとしなかった黒人地区・クワンテイルにある教会の神父になり、虐げられている黒人に救いの手を差し伸べること。最も差別が酷いこの地域に、アイルランド出身のスピラーン神父は、無謀にもやって来たのだ。
まだKKKの存在していたこの地域で、スピラーン神父はあらゆる人からの反感を買っていた。街の住人、まだ奴隷として扱われている黒人さえも、スピラーン神父を退けようとした。しかし、彼は少しも臆することなく、自らの信念を貫き通した。何度もKKKによって壊された教会を自分の手で修復し、字も読めない黒人達に文字を教え、彼らの農作業を手伝い、神父は懸命に働いた。その甲斐あって、彼らはスピラーン神父に絶対の信頼を寄せるようになる。問題があったのは息子のジョージだった。彼は学校で酷いいじめに遭っていたのだった。父親譲りの強い正義感も、学校では役に立たなかった。彼らは集団で、ジョージに陰湿ないじめを繰り返した。ジョージは何度も彼らを殴りつけ、たった数日で暴力沙汰を起す問題児となっていた。
ジョージが転校してきた数日後、学校を出た所で彼はシニアスクールの数人の学生に囲まれ、近くの森に連れて行かれた。
「お前の父親はニガーとヤルのが趣味らしいな」と罵倒する学生達に、ジョージはいつものように殴りかかった。だが、体格の違う三歳年上の少年達に、叶うはずがなかった。
その時、少年達の後ろでやめろという声がした。彼等が振り返ると、黒髪の少年が立っている。何だと少年達が振り返るが、その中の一人が彼を指差してこう言った。
「ユダヤのバリーだ!」
リーダー格の少年が誰だと答えたが、その少年が続けた。
「知らないのか!タウバー検事の息子だぞ!」と叫ぶと、彼は走り去ってしまった。
逃げ出した彼を罵倒しながら、リーダー格の少年がバリーの襟首を掴もうとして、彼に近寄る。バリーは自分よりも大きなその少年の手首を瞬時に掴むと、直立不動のまま彼を地面に叩きつけてしまった。傷付き、倒れていたジョージを始め、誰もがその光景に息を飲んだ。一瞬、何が起こったか把握できなかったリーダー格の少年が我に返ると、もう一度バリーの服を掴もうとした。
バリーはまた瞬時に彼の手首を捻り上げ、今度は少年の手首を押し出すようにして彼を投げ飛ばしてしまった。


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