師団に編成されたLRP・ラープは、分隊での行動人数が旅団リーコンの時よりも少人数となり、作戦内容も以前よりも更に高度なものになっていった。時には暗殺も請け負うのが、師団LRPである。 LZ(着地点)にヒューイがタッチダウンすると、バリー、ホア、クライトマンの三人が飛び降りる。彼らが木の茂みに身を隠すと、ヒューイが飛び立った。 「ピックアップは74時間後だ。急ぐぞ」 クライトマンが言うと、三人は森の中に行軍を始めた。LZから目標地点までは、15キロの距離だった。ホアが先頭を、クライトマンが後ろを歩いた。2時間ほど歩いたが、敵が歩いた形跡や、バンカー(塹壕)などは見つからなかった。バリーはコンパスを見ながら、地図で位置を確認する。周囲に殺気などは感じられなかった。 「よし、先に進もう」 クライトマンが先頭に立ち、歩を進めた瞬間、バリーの前にいたホアが突然振り返り、ナイフを彼に向かって投げた。 バリーの身体が一瞬凍りついたが、すぐにナイフが自分に向かっていなかったことが分かった。見ると、バリーの頭の後ろに、コブラが木の蔓からぶら下がっていた。コブラの頭に、ホアのナイフが突き刺さっている。 「危なかったな」 ホアが笑みを浮かべる。彼はそれを掴み、腹を割くと、まだ動いている心臓を取り出した。 「食うか?」 「コブラは彼らにとって、貴重なタンパク源なんだ。しかも、心臓はめったに拝めないぞ」 クライトマンが笑う。彼も、どうやらこの洗礼を受けたようだ。バリーは苦笑いしながらも、ホアの勧めを受け入れる。 「これ一個で、この任務を遂行中は全く疲れない」 ホアのナイフの上に、小さな動く心臓が乗っている。バリーは意を決して飲み込んだ。
更に3時間後、三人は小さなバンカーを見つけ、交代で休憩を取った。ホアがカムフラージュして哨戒に当たっている間、バリーとクライトマンがレーションのコーンフレークバーをかじっていた。 「お前は何故、この部隊を志願したんだ?」 クライトマンがおもむろにバリーに尋ねた。 「歩兵部隊の訓練を受けていたら、特殊訓練を受けないかと誘われた」 通常8週間の基礎訓練を受け、バリーはフォートベニングで更に16週間の特殊訓練を経て、テストに合格したと言った。 「フォートベニングには、何人ぐらい集まったんだ?」 「27名」 「で、合格したのは何人だ?」 バリーは残りのコーンフレークバーを、全て口の中に放り込む。 「俺を入れて、2人」 「2人!」 思わず声を上げるクライトマンだった。 「師団に編成されてから、高度になったもんだ」 クライトマンは元レンジャー部隊から引き抜かれた、LRRP隊員だった。 「グリーンベレーの奴らに訓練を受けたのか?」 クライトマンが言う。 「グリーンベレー?」 バリーは眉間にしわを寄せた。 「SFG(特殊部隊)のことさ。奴ら、いつもグリーンのベレー帽を被っているだろ?だから俺たちはそう呼んでいるのさ」 バリーはそうだと応える。 「おもしろいな。お前の腕がどれほどのものか、拝見させてもらうよ」 クライトマンも残りのコーンフレークバーを、口の中に詰め込んだ。
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