バリーはタイガーファティーグ(迷彩服)にブッシュハットを被り、M16とピストルにナイフ、弾薬と水筒という軽装備で、作戦本部のテントに来た。バリーの顔を見て、ホアが手を振る。 「こっちだ!」 彼に案内されていくと、テントの外で一人の男が待っていた。 「やっと来たな、ルーキー!」 バンダナを巻いた30位の男が葉巻を吸いながら、不敵な笑みを浮かべた。 「タウバー伍長です!」 バリーが敬礼をする。 「かしこまらんでいい」 男が言った。彼の名はフランク・クライトマン上級曹長、旅団LRRPからの古参兵だった。 「ナムは初めてか?」 クライトマンの問いに、バリーが頷く。 「ディンク(敵)に遭ったら、ためらうなよ」 そう言うと、バリーの背中を叩いた。 「一人目を殺るのはキツイが、二人目から慣れる。三人目以降は、何も感じなくなるから、安心しろ」 クライトマンは葉巻の煙を吸い込んだ。 「1月のテト攻勢以来、やつらベトコン(北ベトナム解放戦線)なんかじゃなくなった。俺たちが戦うのは、訓練された精鋭の北ベトナム正規軍だ。気をつけろよ」 その煙を吐き出す。甘い香りが漂った。 その場で、ブリーフィングが始まる。クライトマンは地図を広げ、ニャチャンからカンボジア国境付近を指差した。 「この付近で何度も歩兵部隊がディンクと交戦している。上層部はここに奴らのベースがあると見ているんだ。俺たちの任務は奴らのベースの位置を確認。作戦行動は74時間」 クライトマンはバリーにその地図を渡した。 「マップリーディングは出来るか?」 「はい」 バリーは、思ったほど緊張していなかった。彼は全て訓練どおりにすれば、上手くいくと考えていた。その様子に、クライトマンが感心する。 ヒューイに乗り込み、LZ(着地地点)に向かう。その機内に乗っているのは、バリー、ホア、クライトマンの三人だけだった。 「やけに冷静だな」 クライトマンがバリーに話しかける。 「怖くはないのか?」 「わかりません」 バリーが応える。 「自分でも驚くくらい、頭が冴えています」 バリーのその言葉に、クライトマンが笑う。大抵の連中は、初任務はみぞおちに痛みを感じるのに、バリーのような男は初めてだと言った。 「お前のような奴は、大物か、ただの大馬鹿物かどちらかだな!」
|
|