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作品名:サイレンス 作者:ぴきにん

第76回   76
バリーはタイガーファティーグ(迷彩服)にブッシュハットを被り、M16とピストルにナイフ、弾薬と水筒という軽装備で、作戦本部のテントに来た。バリーの顔を見て、ホアが手を振る。
「こっちだ!」
彼に案内されていくと、テントの外で一人の男が待っていた。
「やっと来たな、ルーキー!」
バンダナを巻いた30位の男が葉巻を吸いながら、不敵な笑みを浮かべた。
「タウバー伍長です!」
バリーが敬礼をする。
「かしこまらんでいい」
男が言った。彼の名はフランク・クライトマン上級曹長、旅団LRRPからの古参兵だった。
「ナムは初めてか?」
クライトマンの問いに、バリーが頷く。
「ディンク(敵)に遭ったら、ためらうなよ」
そう言うと、バリーの背中を叩いた。
「一人目を殺るのはキツイが、二人目から慣れる。三人目以降は、何も感じなくなるから、安心しろ」
クライトマンは葉巻の煙を吸い込んだ。
「1月のテト攻勢以来、やつらベトコン(北ベトナム解放戦線)なんかじゃなくなった。俺たちが戦うのは、訓練された精鋭の北ベトナム正規軍だ。気をつけろよ」
その煙を吐き出す。甘い香りが漂った。
その場で、ブリーフィングが始まる。クライトマンは地図を広げ、ニャチャンからカンボジア国境付近を指差した。
「この付近で何度も歩兵部隊がディンクと交戦している。上層部はここに奴らのベースがあると見ているんだ。俺たちの任務は奴らのベースの位置を確認。作戦行動は74時間」
クライトマンはバリーにその地図を渡した。
「マップリーディングは出来るか?」
「はい」
バリーは、思ったほど緊張していなかった。彼は全て訓練どおりにすれば、上手くいくと考えていた。その様子に、クライトマンが感心する。
ヒューイに乗り込み、LZ(着地地点)に向かう。その機内に乗っているのは、バリー、ホア、クライトマンの三人だけだった。
「やけに冷静だな」
クライトマンがバリーに話しかける。
「怖くはないのか?」
「わかりません」
バリーが応える。
「自分でも驚くくらい、頭が冴えています」
バリーのその言葉に、クライトマンが笑う。大抵の連中は、初任務はみぞおちに痛みを感じるのに、バリーのような男は初めてだと言った。
「お前のような奴は、大物か、ただの大馬鹿物かどちらかだな!」


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