バリーはベトナム・カインホア省ニャチャンに降り立つ。戦闘能力は高いが、失意の彼は「死亡率の高い部隊」を志願。ユタ州フォートベニングで第5特殊部隊(5th SFG)から訓練を受け、前年旅団LRRP(長距離偵察部隊・ラープ)から、師団に編成されたLRPに配属となる。 階級は、陸軍学校を出ていた為、伍長だった。 ニャチャンの美しい海岸はリゾート地だったことをうかがわせる。 海が一望できる海岸線のすぐ傍に、サン・ベイアメリカ軍基地があった。 数十機のヒューイが滞空している中、バリーは師団LRPが駐屯している場所に赴こうとしたとき、一人のベトナム人の少年が声をかけてきた。 「あんた、タウバー伍長?」 片言の英語で話しかける。バリーは、そうだと応える。その少年は満面の笑みを浮かべ、バリーに握手を求めた。 「俺は、ホアだ。あんたを、案内するよ」 彼はまだ14、5歳の少年のようで、身長もバリーの胸あたりまでしかなく、少女のように細い体つきだった。駐屯地にはCIDG攻撃隊員がいるとは聞いていたが、彼は単なる雑用係だろうか。 コンクリート製の防空壕に入ると、ホアはその部屋をノックした。 「大尉、新任連れてきた」 中から入れと声が聞こえる。バリーは肩の荷物を下ろし、デスクに座っている黒人の仕官に敬礼する。 「バリー・タウバー伍長、ただいま着任いたしました!」 その男はホアに、ここで待てと言うと、デスクを立ち上がった。 「ウェルカム・トゥ・ナトラング!よく来たな」 髭を生やしたその男が敬礼する。男の名はウィリアム・ウィルキンソン大尉。彼は第二次世界大戦から従軍している、職業軍人だった。 「それから、紹介しよう。君のチームのCIDG攻撃隊員、ホアだ」 バリーは一瞬言葉を失った。ホアはどうみても、そんなに力があるとは思えない。 「ホアはこう見えて、モンタニヤード・ヌン族の戦士だ」 アメリカはベトナム戦争に自らが出来るだけ介入せずとも戦えるように、ベトナム人同士で戦争するよう仕向けた。戦争のベトナム化“ベトナミゼーション”である。モンタニヤード、山岳少数民族を訓練し、民間不正規防衛団(CIDG)を組織。彼等はLRP隊員の一員で、その高い機動力から”ロードランナー”と呼ばれた。 「俺、強いよ」 ホアは、屈託の無い笑顔を浮かべる。その言葉は、バリーが任務に着いてから思い知らされることになる。 「着任して早々だが、任務だ。0900時に、ブリーフィングを開始する」 ウィルキンソン大尉に厳しい表情が宿る。 「サー、イエッサー!」 バリーは敬礼した。
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