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作品名:サイレンス 作者:ぴきにん

第68回   68
アンの手に、睡眠薬が入った瓶が当たった。彼女は何も考えずそれを掴むと、よろめきながら部屋を出た。
「死ねばいいのよ・・・みんな・・・」
ヘザーは力無く呟いた。彼女は、床に手を突いた。手に涙が零れ落ちる。
「そんなこと・・・言うつもりじゃなかったのに・・・」

暗い夜道を、アンは涙を流しながら歩いた。
何が起こったのか、まだ理解出来ていなかった。

「ごめんね、アン・・・許して、バリー・・・」
ヘザーは、涙を流しながら、机の上にあったノートに、何かを書いている。

ドアのノブを回すと、部屋の中に、一切の灯りが灯っていなかった。
誰の気配も感じない。
「アン・・・」
バリーは、急に胸騒ぎを感じた。

窓を開けると、冷ややかな空気が部屋の中に入ってくる。
ヘザーは下を見た。

部屋の外に出て、階段を下りようとしたとき、魂の抜け殻のように呆然と階段を登る女がいた。
「アン!」
アンはバリーの顔を見た。
「どこに行ってたんだ?」
アンの頬が赤くなっている。バリーはその頬に触れた。
「何があった?」
アンの目に、涙が浮かび上がる。
「ヘザーが・・・」
「ヘザーに、何かされたのか?」
アンは目を逸らした。
「あいつは今、まともじゃないんだ」
涙がとめどなく流れる。バリーはアンに顔を近付けた。
「あいつの言葉を、真に受けるな」
アンは目を閉じた。
バリーはそっと、彼女に吸い寄せられるように、その唇をふさいだ。

足が、窓から離れる。
夜の風が気持ちよかった。

部屋の中に入ると、互いの鼓動が聞こえるようだった。
その肌に触れたかった。

頭の中で、強い衝撃があった。
音という音が消え、何も聞こえなくなっていく。

白い肌に、温もりを感じた。
破裂しそうなくらいに、互いの鼓動が早くなっていく。

寒い。
目の前が、暗くなってきた。

熱い。
身体が燃えそうなくらい、熱い。

___________________そして、一本の糸が切れた。

その音に、二人の身体が反応した。
見ると、決して倒れるはずのない椅子が倒れている。
二人は、我に返った。
バリーは視線を落とし、アンの身体から離れた。
「すまなかった・・・」
アンは、はだけた服を手で隠した。


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