カリフォルニア大学バークレー校で、アンジェリアの二日間に渡っての推薦入学試験が行われた。付き添いに来たバリーは、着慣れないスーツに袖を通し、その間サンフランシスコ、オークランド、リッチモンドで法律事務所の入社面接を受けていた。 途中、ランチに入った大学近くの店で、アンはバリーが着ていたスーツの意味を問いかけた。 「ローファームに入る為だ」 「どうして?」 「どうしてって、働くんだよ」 ステーキを頬張りながら、バリーは腕時計を気にしていた。 「聞いてるのは、そんな事じゃないわ!」 アンが声を荒げる。その声の大きさに、周りの客も一瞬動きが止まる。 「弁護士になるのに、イェールのロースクールに行くんじゃなかったの?」 「ロースクールでも、ローファームで実務経験を積んでも、弁護士資格は取れる」 「もう!」 アンが珍しく苛立ち始めた。 「じゃあ、ヘザーはどうするの?」 「ヘザー?」 「一緒にイェール・ロースクールに行くって、約束してたんじゃないの?」 アンの言葉を聞き、バリーのナイフとフォークが止まった。 「彼女は、俺とは目指す道が違う。それに・・・」 バリーはアンを見た。 「お前の、学費を稼がないとな」 先ほどまでの、アンの勢いが消えていく。 「私なら、スカラシップを取るわ。だから心配しないで」 「スカラシップは制約が多い。そんな制約を気にしていたら、お前の才能が伸びない」 アンは沈んだ表情を浮かべる。 「ヘザーは・・・?」 「お前が関わることじゃない」 バリーはステーキを、再び口の中に入れた。アンは黙って立ち上がると、店を出て大学へ向かった。久しぶりの口喧嘩だった。どうせヘザーを想っての言動だろうが、彼女とは、いずれけじめを着けようと考えていた。バリーは水を飲み干して立ち上がろうとしたとき、店内のテレビがざわめき、店の誰もがテレビに釘付けになっていた。ふとテレビを観ると、NFL・ナショナルフットボールカンファレンスの試合をしている。 名門・フォーティーナイナーズ対カージナルズ戦で、カージナルズのクォータバックが、タッチダウンを決めた瞬間だった。 「すごい・・・」 バリーは思わず呟いた。そのクォーターバックは、他の選手に比べて小さな身体にもかかわらず、なみいる選手のタックルを潜り抜け、異常な速さで敵のエンドゾーンに入ったのだ。テレビのキャスターが、その選手を「黒い弾丸」と呼んでいた。そのニックネームはスタンフォード大学で着けられたものだという。テレビの画面に、彼の写真と名前が出た。 彼の名はジョン・マッキンタイア。端正な顔立ちの黒人だった。バリーは二年後、ベトナムで彼と会うことになる。
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