ミッダーストリートから少し離れたブロックに、バリーが住んでいるアパートがあった。車をウィルキンソン大尉が借りていたガレージに入れ、シャッターを閉めると、バリーは頬に突き刺さるような寒さを感じながら、数メートル先にある自分のアパートへ歩いた。 彼は何も感じていなかった。アンジェリアが居なくなった事に対しても、バリーの中に何も動揺が起きていなかった。彼はそんな自分の冷徹さに苛立ちながら、通りから延びるアパートへの石段を上がろうとした。 ふと気配を感じ、石段の上を見た。彼の目に、美しいプラチナブロンドの髪を靡かせた女が立っている。 「アン!」 その声にアンジェリアが振り返った。 「バリー!」 アンがゆっくりと石段を降り、バリーに近付いた。二人は七年ぶりの再会を喜ぶでもなく、ただじっと見詰め合った。吸い込まれるような深い碧の瞳に、透き通るような白い肌。絶対的な美しさだが、何処か脆く、今にも崩れ落ちそうな危うさは、バリーを強く惹きつけていた。 アンが何かを言おうとしたが、バリーはジョージに会ったと言い、彼女の言葉をわざと遮った。彼女が言おうとしている言葉は、全て察しがついていた。彼女がそれを口にすることで、この七年間で苦しみ、築き上げたことが、全て失うような気がしていたからだった。アンも彼の気持ちを察したのか、それ以上は何も言わなかった。 「ごめんなさい。貴方が生きてるって聞いたから、会いたかったの。それだけ」 アンは昔のように笑顔を浮かべると、その場を立ち去ろうとした。 バリーはアンの腕を掴み、彼女の冷え切った冷たい頬を触った。 「そのままじゃ、風邪ひくぞ。ジョージの居るホテルまで送ってやるから、ホットチョコレートでも飲んで行けよ」 アンは小さく頷き、自分の頬に触れているバリーの手をそっと掴んだ。
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