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作品名:サイレンス 作者:ぴきにん

第51回   51
「俺が?」
ステニスは、ゆっくりと頷いた。
「俺は、あんた達アングロサクソンと違ってユダヤ人だ」
「半分だけだろ?」
バリーは怪訝な表情を浮かべる。
「君の母親は、かのジャン・ファビュエール・フォン=デボアの血を引いている」
そう言うと、ステニスはジャン・デボアという人物の話を始めた。
デボア家はハプスブルグ家に仕えた貴族で、オーストリアとハンガリー帝国の軍事・経済を掌握していた豪族だった。その7代目当主となったジャン・デボアは、オーストリア・ハンガリー・イタリア・フランスを跨ぐ「ハノーブ・トラスト・バンク」の創始者であり、NATO設立の立役者でもあった。
「そんな男が、俺の爺さんだったのか」
バリーが物珍しそうに呟く。
「ただし、君は正統な血統ではない」
ステニスは話を続けた。バリーの祖母に当たる女性は、フランス人の女学生だったという。
「しかしデボア家は、実力者のみが当主の座に座ることが出来る。君は、当主の候補として名前が挙がっている筈だ」
ステニスの話を聞いたヘザーは、バリーの腕に抱きつき、喜んだ。
「君は、自分のルーツも知らなかったのかい?」
ステニスが、ほくそえんだ。
「生憎、両親とは絶縁状態なんでね」
バリーは食べかけていたサンドイッチを口に押し込めた。
「君がデボア家を継いだ場合、君は強大な権力者になる可能性がある。僕たちの仲間になれば、更にその力は強大なものになるだろう」
バリーはホットチョコレートを飲み干した。
「興味無いね」
バリーのその言葉に、笑みが消えるステニス。
「何故だ?」
「そんな力なんか、俺には必要無い」
ステニスは不適な笑みを浮かべる。
「我々の協力が無くても、権力を手にすることが出来るということか?」
「いいや、俺の家族が幸せであれば、何もいらない」
バリーのその言葉を聞いた瞬間、ステニスは大声で笑った。
「それが、君の“正義”なのか?おもしろい男だ」
「家族を守るのは、人間が生きる為の、幸福の原理だ。それが、何故可笑しい?」
ステニスは声を上げて笑っていたが、バリーの言葉に落ち着きを取り戻した。
「君には“神”はいるのか?」
ステニスがバリーに問いかけた。
「俺は、無神論者だ」
「なら話は早い。家族に幸せをもたらすのは、優れた統治者のみが出来る。その優れた統治者になる為の“正義”を教えてやろう」


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