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作品名:サイレンス 作者:ぴきにん

第50回   1965年1月 スカル&ボーンズ
ヘザーはよく“スカル&ボーンズ”の名前を口にするようになった。イェール大学に存在する、秘密結社である。だが秘密結社であるにも関わらず、メンバーの名簿などが全て公開されていた組織だった。政界や経済界での有力者や歴代のCIA長官が、このスカル&ボーンズのメンバーだったこともあり、出世欲の強いヘザーは、しきりにスカル&ボーンズに入社したいと言うようになっていった。
「あなたは、興味無いの?」
その日、学生食堂でバリーとジョージ、ヘザーの三人がランチをとるため、テーブルを囲んでいた。
「何が?」
本を開きながらサンドイッチを口に頬張っていたバリーが、頭を上げた。
「スカル・・・何?」
ジョージがヘザーに言った。
「二人とも、興味無いの?」
ヘザーはもう一度スカル&ボーンズの説明を二人にするが、彼らは興味が無いと、彼女の話を一蹴した。
「入社資格が成績や人柄、家系が関わってくるの。あなた達だったら、絶対に政界か経済界の中枢に入れるはずよ!」
それを聞いたジョージは両手を挙げて、降参の姿勢を見せた。
「それだったら、俺は資格が無いよ」
ヘザーはバリーにも問いかけるが、彼は再び興味が無いと応えただけだった。彼女は溜め息をつき、煙草に手を伸ばす。火を点けようとしたとき、背後で人の気配がした。振り返ると、スーツを着た数人のアイビーカットの男たちが立っている。ヘザーはそれがすぐに“スカル&ボーンズ”のメンバーだと分かった。
先頭に立っていた目の細い金髪の男が、本を読んでいるバリーの前に立った。
「君が、バリー・タウバーか?」
バリーは頭を上げる。
「あんたは?」
「僕はハワード・ステニス」
「ステニス?」
バリーはその名前に聞き覚えがあった。その記憶を手繰り寄せる。
「ここでは何だから、僕たちに着いてきてくれないか?」
ステニスは、静かな口調で話した。
「勉強にアルバイトがあるんでね。ヒマが無いんだ。俺に用があるんなら、ここで言えよ」
バリーのその言葉に、ステニスの後ろに立っていた男が怒りをあらわにするが、ステニスがそれを制止する。
「わかった」
そういうと、ステニスはバリーの向かいに座った。
「君は、僕が誰か知っているかい?」
「誰?」
バリーがそう言うと、ヘザーが彼に耳打ちをする。ハワード・ステニスは、スカル&ボーンズの幹部だと。
「その幹部が俺に何の用?」
その細い目を光らせながら、ステニスは静かに話し始めた。
「君をラッシュ(勧誘)しに来たんだ。君は我らがスカル&ボーンズに入る資格を持っている」


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