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作品名:サイレンス 作者:ぴきにん

第45回   45
次の日、講義が終わってブルドッグスのグラウンドに来ると、ルーキーは基礎練習に励んでいた。バリーはユニフォームの背中に書かれている「スピラーン」の文字を探す。
だがフィールド上のメンバーに、「スピラーン」は居なかった。バリーはため息をつく。
「今日は、いないのか・・・」
そう言うと、バリーは腕時計を見た。まだ、少し時間があるようだ。ベンチに座り、フィールドを眺めていた。少し前までは日差しが強く、照りつけるような暑さだったが、ここ数日で急に涼しくなってきた。朝と夜は、寒いくらいになっている。ここは、ミシシッピーとは気候が全く違うようだ。そう思いながら、バリーは煙草を一本取り出し、口にした。
陸軍学校を出る直前から、煙草を吸い始めていた。最初は興味本位だったが、今ではこの煙草が「無くてはならないもの」になっている。
「無くてはならないものか・・・」
バリーが呟いた。
煙草の火が終わりに近付いた時、自分の背後で気配を感じた。
「フル・スカラシップを取った法科の秀才って、お前だったのか」
野太い声が聞こえた。バリーは振り返る。そこに立っていたのは、バリーが会いたがっていた親友のジョージ・スピラーンだった。
「・・・ジョージ・・・」
バリーが立ち上がる。目の前に立っているのは、ジョージ。彼はまるで、スピラーン神父の生き写しだった。
「バリーだろ?」
ジョージはバリーに握手を求めた。バリーはそれに応える。
「久しぶりだ!」
ジョージは満面の笑みを浮かべる。だがバリーの表情は冴えなかった。
「どうした?」
ジョージはバリーの顔を覗き込む。
「・・・ずっと、謝りたかったんだ」
そうバリーが言うと、ジョージの顔から笑顔が消えた。
「だから、ここまで来た」
一度視線を落としたが、ジョージはまたすぐに笑顔を浮かべた。
「お前は、悪くないさ」
ジョージは、そう言ってバリーの肩を叩く。
「あの時は、俺も気が動転してた。俺も、ずっとお前に謝りたかったんだ」
そういうと、ジョージはスピラーン神父が死んでからの経緯を話し始めた。
あれからロレーナ・スピラーンの生まれ故郷であるカリフォルニアに行き、母と子二人での生活を送っていた。
「母さんが言ってた。バリーを許してやりなさいって」
「ロレーナさんは元気なのか?」
バリーがそう言うと、ジョージは視線を落とす。
「母さんは・・・4年前に死んだよ」
バリーはショックを隠せなかった。
「そうか・・・。あの人にも、謝りたかったのに・・・」
ロレーナは胃ガンだった。最期は痩せ細って死んだという。彼女の死後、ジョージは施設に入り、誰の養子にもならず、ここまで来た。
「母さんは、お前とリトル・アンが家族なんだって言ってたんだ」
大学を出たら、二人に会いに行こうと考えていたと、ジョージは言った。
「俺の家族は、もうお前とアンだけなんだ」
バリーはジョージの肩を掴んだ。
「俺も、そうだ」
ジョージもバリーの肩を掴み、二人は微笑んだ。
「そうだ!お前に頼みがあるんだ!」
声を高く上げ、バリーは言った。
「アンに、会ってやってくれないか?」
「アンジェリアも来ているのか!?」
バリーも、ここまで来た経緯をジョージに話した。
あれから陸軍学校に入り、虐待の矛先がアンに向かってしまった事。ダニエル・フロストとの婚約の事。但し、アンジェリアと父親の関係以外は。それを聞くとジョージは拳を握り締めた。父親のジョナサン・タウバーに対しての、怒りがそうさせたのだろう。
「今は奴に対抗する術がない。だが、決着は俺が必ずつける」
バリーは静かに言った。


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