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作品名:サイレンス 作者:ぴきにん

第43回   43
 翌日、バリーはイェールのフットボールチームがあるグラウンドに来ていた。グラウンドには、イェールブルー&ホワイトの「ブルドッグス」が練習に励んでいた。
今はカレッジフットボールの時期で、チーム練習自体が殺気立っているようだ。更に11月にはアイビーリーグの伝統戦である、ハーバード対イェール・THE GAMEが控えている。殺気立つのは、当然だろう。
バリーはグラウンドを歩きながら、練習風景を見ていた。陸軍学校時代に、一度フットボールを始めようとしたが、合気道の円を描くように動く足捌きと、フットボールの足捌きは全く違っていた為、自分の身を守る為の合気道を優先した彼は、この競技を断念せざるを得なかった。
それでも、バリーはこの競技が好きだった。相手のエンドゾーンに向けて前進させ、得点するのだが、その間に繰り広げられる一進一退の攻防が白熱するのである。
バリーの身長が5フィート11インチ(181cm)だが、フィールドで練習している選手たちは優に6フィート2インチ(190cm)以上はあるようだ。
ブルドックスがスタメンチームと、ルーキーチームに別れ、模擬試合をしている。
ルーキーチームのオフェンスで、スクリメージ・プレーが始まっていた。クォーターバックが一瞬の指示で、ワイドレシーバーがエンドゾーンに走り出している。
成功する確率の低いパスプレーだった。しかし、成功すれば長距離の前進が見込めるのだ。
バリーは、ルーキーチームのクォーターバックが投げたボールのラインに度肝を抜かれた。
ワイドレシーバーに向けてのパスは、距離・ライン・スピード、どれも正確且つダイナミックで、守備を抜けたワイドレシーバーにパスが通る。成功だった。
ルーキーチームが歓喜に沸いている。チームメイトが、クォーターバックを称えていた。そのクォーターバックのユニフォームの背中には「スピラーン」と書いている。
彼は、バリーがどうしても会いたがっていたジョージ・スピラーンだった。もう数日前に、ジョージがイェールに来ていたことを、バリーはとっくに調べ上げていたのだ。
ジョージ・スピラーンはパブリックスクールからの入学だったが、彼もフットボール・スカラシップを受けていた。しかし、この場合はスポーツだけでなく、学業でもトップクラスでなければ、この対象にはならない。その難関を突破し、彼は見事に父親の期待に応えていたのだ。
けれどバリーは、ここにきてジョージに会うのを躊躇っていた。


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