ふと窓の外を見ると、既に空が白み始めている。バリーは時間の感覚が乱れていた。ベッドに横たわったのが夜の11時を越していたはずだった。そしてスピラーン神父が現れ・・・。 一瞬に感じたあの時間、眠りと覚醒の“間”にいたことを悟った。あれは確かにスピラーン神父だった。 運転しながら、バリーは手にしていたロザリオを握りしめた。
イェール大学へ行く為、コネチカット州のニューヘイヴンを目指した。途中のガソリンスタンドで地図を購入し、経路を確認した。車での移動行程はおよそ3日から4日と言うところだろう。バリーはボンネットの上に広げた地図を見ながら、助手席に乗っているアンジェリアに視線をずらした。彼女は、あれから一言も発していない。窓の外を眺めながら、バリーと視線を合わすことさえしなかった。バリーは色々話しかけるが、途中のモーテルでも、彼女は何も言葉を発しなかった。まるで、魂の抜けた“人形”のようだった。バリーは彼女にかけてやれる言葉を、見つけることが出来なかった。 ベッドで横たわるアンは、明け方には必ずシーツの中で泣いているようだった。ソファで横たわるバリーにとって、その嗚咽は苦痛だった。 父親への憎悪、母親の最後の罵声への怒り、そして何も出来なかった自分への戒め。 手にしたスピラーン神父のロザリオを握り締め、バリーはその苦痛に耐えていた。
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