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作品名:サイレンス 作者:ぴきにん

第36回   36
 バリーは寝巻きに着替えないまま、ベッドに横たわっていた。時計は夜の11時を過ぎている。ずっとアンジェリアのことを考えていた。この7年、一体何があったのか。自分は何故、この家に戻らなかったのだろうか。このままアンジェリアを置いて、大学へ行くべきなのか。バリーはずっと部屋の天井を見ていた。ベッドの脇にあったランプシェードの明かりが、天井を映し出す。何もない、真っ白な天井だった。
真っ白な天井。見慣れた天井のはずだった。
ふと、その天井にランプシェードに照らされた人影が映る。その影はゆっくりと近付き、そしてバリーの前で止まった。影の手が伸び、バリーの足首を掴む。
その瞬間、バリーに緊張が走った。確かに、誰かに足首を掴まれている。彼は身体を動かそうとするが、身体は全くいうことをきかなかった。自分の呼吸音だけが、頭の中で轟き始める。影がバリーに近付く。その影がバリーの視界に入ったとき、バリーは声にならない声を上げた。
その影は、死んだはずのシネイド・スピラーン神父だった。
彼はまるで生きているかのような錯覚まで覚えた。確実に“そこに”存在しているのだ。
スピラーン神父は何かをバリーに告げていた。しかし、その“声”は全く聞こえない。彼の耳の中では、自分の激しくなった呼吸音だけが轟いている。全身に冷えた汗が湧き上がり、バリーの鼓動が頂点に高鳴ったとき、スピラーン神父の“声”が響き渡った。
「助けられるのは、君だけだ!」
 その瞬間、バリーは目を見開いた。
そこには“存在”していたはずのスピラーン神父の姿が無く、見慣れた部屋の天井が見えていた。
バリーは上体を起こし辺りを見回すが、誰も居ない。一瞬の空白の後、その名前がバリーの口から突いて出る。
「アンジェリア!」
バリーは部屋から飛び出ると、まるで導かれたように一階の地下室へ駆け下りた。
掛ってあったはずの鍵が、外されている。そっとドアのノブを回し、中へ入った。高鳴る鼓動を抑え、バリーは息を殺す。
確かに、人の気配がしていた。階下へ続く階段をゆっくり下りると、以前は無かったはずのもう一つのドアが現れた。そっとノブを回す。鍵は掛かっていない。額から、冷たい汗が流れ落ちる。ドアをゆっくりと開けた。
目の前に、何も置かれていない殺風景な部屋が現れた。しかし、何かの物音がしている。その部屋の奥から、もう一つの部屋があるようだった。細心の注意を払いながら、ゆっくりと歩を進めた。次第に物音は、はっきりと聞こえるようになってくる。
奥の部屋の入り口に立ったとき、バリーは全身の血が逆流するのを感じた。


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