イギリス陸軍第22SAS連隊所属のサミュエル・クラッキオーロ大尉は、脱走または脱走未遂、敵との内通または幇助の罪により、軍法会議にかけられた。
事の発端は、1979年11月にに起きた、イラン・アメリカ大使館人質事件である。 アメリカは人質を救出するべく、1980年4月に人質救出作戦を決行する。 作戦名は”イーグル・クロー”。 第22SAS連隊クラッキオーロ大尉は、部下であったジョン・マカリスター少尉とエリオット・ライリー少尉と共に、創設後、初の出動となった第1特殊部隊デルタ作戦分遣隊・デルタフォースのオブザーバーとして、作戦に参加することとなった。
しかし、クラッキオーロ大尉は敵と内通し、部下であったマカリスターとライリーを射殺。 デルタフォース隊員であった4人を射殺し、脱走を計る。
これはディスオナーラブル・ディスチャージ、不名誉除隊は下より、イギリス陸軍刑法の違反事項として、死刑相当とされた。 クラッキオーロ大尉は、一切の容疑を否認し、無実を主張しているが、彼が主張する無罪の証拠は、何一つ立証出来なかった。
イギリス国内では、死刑制度廃止の機運が高まっていたが、こと軍隊に於いては、全くの問題外であった。 サミュエル・クラッキオーロ大尉は、死刑判決を待つばかりとなっていた・・・。
「何故だ・・・」 クルーエルが、小さな声でバリーに言った。 「何故ここに、女がいる?」 クルーエルの目の前には、金髪の美女が座っている。女はクルーエルを、魅惑的だが凍てつくような眼差しで、睨みつけた。 「また、聞いてなかったのか?さっき、ブリーフィングで紹介しただろう?」 隣に座っていたバリーが応えた。 「彼女は、モビーディックの部下だ。俺を守るために、派遣されてきたんだぞ」 「でも、女だぞ!」 クルーエルの言葉に、またその女が睨んできた。 「彼女とアイキドーで手合わせしたんだが、俺は彼女に三度も投げ飛ばされたんだ!」 「何!?お前が、投げ飛ばされた!?」 バリーは満面に笑みを浮かべながら、頭を掻いた。 「言っておくが、彼女は強いぞ!なあ、”ルパス”!」 その女・”ルパス”は美しい笑みを浮かべる。 「デボアの後継者様を守るのが、アタシの役目だ。それに、こんな男が本当にジャン様の後継者になれるのかどうか、アタシの目で確かめたくってねえ。今回の作戦に参加したってワケさ」 「そりゃ、光栄だね」 バリーが笑った。 クルーエルはルパスが放つ、その異様なオーラを感じ取り、額から流れ出る汗を拭った。 「というワケだ。彼女に手を出すと、酷い目に遭うぞ!」 そう言うと、バリーは声を上げて笑った。 その時、耳につけていたイヤホンに、ドライバーの声が流れる。 「バリー様、3分で作戦開始地点に到着」 それを聞き、バリーとクルーエル、そしてルパスが顔面を覆うほどのガスマスクを被り、ステアAUGにマガジンを装填する。 「作戦開始だ!」
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