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作品名:サイレンス 作者:ぴきにん

第269回   269
イギリス陸軍第22SAS連隊所属のサミュエル・クラッキオーロ大尉は、脱走または脱走未遂、敵との内通または幇助の罪により、軍法会議にかけられた。

事の発端は、1979年11月にに起きた、イラン・アメリカ大使館人質事件である。
アメリカは人質を救出するべく、1980年4月に人質救出作戦を決行する。
作戦名は”イーグル・クロー”。
第22SAS連隊クラッキオーロ大尉は、部下であったジョン・マカリスター少尉とエリオット・ライリー少尉と共に、創設後、初の出動となった第1特殊部隊デルタ作戦分遣隊・デルタフォースのオブザーバーとして、作戦に参加することとなった。

しかし、クラッキオーロ大尉は敵と内通し、部下であったマカリスターとライリーを射殺。
デルタフォース隊員であった4人を射殺し、脱走を計る。

これはディスオナーラブル・ディスチャージ、不名誉除隊は下より、イギリス陸軍刑法の違反事項として、死刑相当とされた。
クラッキオーロ大尉は、一切の容疑を否認し、無実を主張しているが、彼が主張する無罪の証拠は、何一つ立証出来なかった。

イギリス国内では、死刑制度廃止の機運が高まっていたが、こと軍隊に於いては、全くの問題外であった。
サミュエル・クラッキオーロ大尉は、死刑判決を待つばかりとなっていた・・・。



「何故だ・・・」
クルーエルが、小さな声でバリーに言った。
「何故ここに、女がいる?」
クルーエルの目の前には、金髪の美女が座っている。女はクルーエルを、魅惑的だが凍てつくような眼差しで、睨みつけた。
「また、聞いてなかったのか?さっき、ブリーフィングで紹介しただろう?」
隣に座っていたバリーが応えた。
「彼女は、モビーディックの部下だ。俺を守るために、派遣されてきたんだぞ」
「でも、女だぞ!」
クルーエルの言葉に、またその女が睨んできた。
「彼女とアイキドーで手合わせしたんだが、俺は彼女に三度も投げ飛ばされたんだ!」
「何!?お前が、投げ飛ばされた!?」
バリーは満面に笑みを浮かべながら、頭を掻いた。
「言っておくが、彼女は強いぞ!なあ、”ルパス”!」
その女・”ルパス”は美しい笑みを浮かべる。
「デボアの後継者様を守るのが、アタシの役目だ。それに、こんな男が本当にジャン様の後継者になれるのかどうか、アタシの目で確かめたくってねえ。今回の作戦に参加したってワケさ」
「そりゃ、光栄だね」
バリーが笑った。
クルーエルはルパスが放つ、その異様なオーラを感じ取り、額から流れ出る汗を拭った。
「というワケだ。彼女に手を出すと、酷い目に遭うぞ!」
そう言うと、バリーは声を上げて笑った。
その時、耳につけていたイヤホンに、ドライバーの声が流れる。
「バリー様、3分で作戦開始地点に到着」
それを聞き、バリーとクルーエル、そしてルパスが顔面を覆うほどのガスマスクを被り、ステアAUGにマガジンを装填する。
「作戦開始だ!」


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