1980年6月 スイス・チューリッヒ。
スイス最大の都市・チューリッヒの、美しいチューリッヒ湖を望む丘陵に、ヘルツォーク&ド・ムーロンの近代的なビルがそびえ立っていた。MSF・国境無き医師団のスイス支部である。 次の任務地であるケニアに飛び立つため、サラ・マクミランはこのビルを訪れていた。 書類の手続きを終え、ビルから出てくると、彼女は道路に出てタクシーを拾うため、足早にMSFの敷地から出る石段を降りた。 そこで、彼女は足を止める。 「バリー!」 そこには、停めたボルボに腰掛けるバリーがいた。彼は、優しい笑みを浮かべ、彼女が出てくるのを待っていた。 「こんな所で、どうしたの!?」 サラはバリーに駆け寄ると、彼に抱きついた。 「お前に、どうしても会いたくなった」 そう言うと、彼女の紅い唇に触れ、細い背中を抱き寄せた。
その夜、二人は何度も抱き合い、愛し合った。 サラの、吸い付くような白い肌を愛撫しながら、彼女の成熟された女の匂いを嗅ぎ、バリーは何度も彼女の中で果てた。
その激しさの中で、サラはバリーが囁いた言葉を聞いていた。 「愛してる」 それまで、何度か会って愛し合ってきたが、その言葉を彼女が聞いたのは初めてだった。 刹那的な激しさの中、腹の中が熱く、燃えるような疼きが何度も込み上げて来るのを、サラは感じていた。 それは、今まで感じたことの無い痺れだった。 絶頂を何度も向かえた後、心地よい安らぎを感じ、サラはバリーの腕の中で、いつの間にか、眠りに落ちていた。
窓から入る光が眼に当たり、サラはゆっくりと瞼を開いた。 見るとホテルの部屋の天井が、朝日に照らし出されている。 彼女は、隣に眠っているバリーの身体を触ろうと腕を伸ばした。 だが、そこに何も無かった。 バリーの姿が、忽然と消えてきた事に気付き、サラはベッドから起き上がると、彼の名を呼んだ。 「バリー!」 バリーは、どこにもいなかった。
そして、サラはバリーに、二度と会う事が出来なかった・・・。
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