20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ
 ようこそゲストさん トップページへ ご利用方法 Q&A 操作マニュアル パスワードを忘れた
 ■ 目次へ

作品名:サイレンス 作者:ぴきにん

第266回   266
「俺の為に、アンを見殺しにしたのか!?」
バリーはジャン・デボアの襟首を掴んだまま、同じ瞳の色をした老人を睨みつけた。
息が出来ない苦しさに、ジャン・デボアの顔が苦痛で歪んだ。
「クソじじい!」
そう悪態をつくと、掴んでいた襟首を放した。
言いようの無い怒りと虚しさの反面、バリーはジャン・デボアの言葉を理解していた。
「愛する者を全て排除し、何よりも非情に、徹するのだ。でなければ、”彼ら”を倒すことは出来ない。お前が、戦争をしかけようとする全ての”悪”を殲滅するのが、目的ならばな・・・」
それでも、彼は抑え様の無い怒りを爆発させる。
室内にあった調度品の数々を、素手で破壊し始めた。
それをまたモビーディックが止めようとするが、ジャン・デボアがそれを阻んだ。
自分が如何に、愚かなことをしているのは分かっていたが、壊さずにはいられなかった。
呼吸が乱れ、息が上がってしまう。
「気は、済んだか?」
その声に反応し、バリーはジャン・デボアを睨みつけた。
「怒り、暴れるがいい。それで気が晴れれば、全ての”怒り”は捨てるのだ」
乱れた呼吸の音だけが、耳に響く。
「まだ怒りが治まらぬのなら、私を殺すがいい。お前に殺されるのであれば、私は喜んで死を受け入れる」
もう一度、バリーはジャン・デボアの襟首を掴んだ。
「望み通り、殺してやる!」

「その代わり、”怒り”を捨て去り、”冷酷”に徹するのだ!」

どこかに、冷静な自分がいた。
その一言で、バリーは怒りを解き放つ事ができた。
「アンジェリアには、一目、会ってみたかった・・・」
その言葉に、背を向けていたバリーが振り返る。
「あの子は、ベアトリスの生き写しだったのだ。あの子に会い、この腕で抱きしめたかった・・・」
「いいや。生き写しではない」
呼吸を整えたバリーが、応えた。
「アンもベアトリスも、本物の”天使”だったんだ」
壁に掲げられていた、ベアトリスの肖像画を見上げると、さっきまで浮かべていた怒りの形相は消え、バリーは笑みを浮かべた。
「必ず、もう一度会える・・・」


← 前の回  次の回 → ■ 目次

■ 20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ トップページ
アクセス: 1114