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作品名:サイレンス 作者:ぴきにん

第264回   264
再び、アレクセイの前にデボアの男が現れる。
男は「最後の試練」を受けよと、彼に告げた。
「それは、何だ?」とアレクセイが訊ねると、男は彼に「お前の父親、グスタフを殺せ」と応えた。

1914年6月21日。セルビア・ベオグラード。
父・グスタフは警備隊を召集し、軍事情報局本部ドラグーディン・ディミトリエビッチ大佐の逮捕を部下に命ずる。
「バシチ首相の命を受け、これより、ディミトリエビッチ大佐を国家反逆罪により逮捕する!」
同時に警備隊は、黒手組のメンバーであるガヴリロ・プリンチップ、ネジェルコ・チャブリノビッチ、トリフコ・グラベの逮捕も行うと、自らのサーベルを高く掲げ、声を荒げた。

背後に、気配を感じ取ったグスタフが振り返った瞬間、銃声と共に胸に違和感を感じた。
「き、貴様・・・!」
そこには、銃を手にした息子のアレクセイが立っている。
彼は、透き通った水色の瞳で、冷ややかに胸から血飛沫をあげて倒れるグスタフを見た。
グスタフは、そのまま倒れた。それを目の当たりにしていた警備隊は、警備隊長であった、グスタフ・イバニセビッチが、息子のアレクセイに撃たれたことを理解した。
警備隊に、どよめきが走る。
それを見ていたアレクセイは、腰に着けていたサーベルを高く掲げると、困惑していた警備隊に激を飛ばした。
「我がセルビアに反逆罪を犯したのは、父・グスタフである!この男は、セルビアに仇なす、オーストリアの犬となったのだ!」

「父親を、殺したのか?」
バリーは、隣で車椅子に座っていたジャン・デボアを見た。彼は、表情を崩さないまま、バリーを見上げる。
「あの男を殺したことは、今でも後悔していない。私が後悔しているのは、ベアトリスを手放したことだ」

ディミトリエビッチ大佐を逮捕しようとした、グスタフ・イバニセビッチは息子のアレクセイに射殺された。同時に、プリンチップら3名の暗殺実行部隊のメンバーの逮捕も、アレクセイの部下によって阻止される。
それを知ったセルビアの首相ニコラ・バシチは、オーストリアとの戦争を覚悟した。

1914年6月28日。
ビドブランと呼ばれる、セルビア正教にとっての聖なる日に、サラエボで行われるパレードで、オーストリア皇位継承者フランツ・フェルディナンド大公は、ガヴリロ・プリンチップによって暗殺された。

これに激怒したオーストリアは、7月25日にセルビアと国交断絶し、三日後の28日に宣戦布告。

この事件が引き金となり、わずか短期間で、ドイツ・オーストリア・イタリア、イギリス・フランス・ロシアを巻き込む戦争が起こり、そして第一次世界大戦へと発展していく。

たった一発の銃弾が、世界を混沌に落としこめて行った・・・。


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