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作品名:サイレンス 作者:ぴきにん

第26回   26
バリーはスピラーン神父の腕を掴み、何度も自分が行くと言った。
スピラーン神父は、何度も嘆願するバリーを、止めるために抱き締めた。
「だから・・・お願い、僕とアンを助けて」
「分かっているよ」
スピラーン神父は、バリーの顔を見る。彼はバリーの頭を撫でながら
「今夜には、ここを発とう」
と言った。バリーは小さく頷いた。スピラーン神父は、この教会を出る準備をしていたのだった。
スーツケースに、最後の荷物となったデスクの上の写真を入れると、スピラーン神父はバリーに外へ出るように促した。バリーが執務室を出た途端、彼はその異変に気付いた。
窓の外から、赤々と燃え盛る十字架が何本も見える。そして、その明かりに浮かび上がる白装束の人間。
バリーが立ち止まっていると、背後の執務室から、同じく異変に気付いたスピラーン神父が出たきた。
「いけない、早くここから出なければ!」
その瞬間、真正面の扉が蹴破られる。同時に、頭から三角の白い頭巾を被った二人の男たちがライフルを手に雪崩れ込んだ。
「スピラーン神父だな!出ろ!」
男たちはライフルを構える。
「KKKか・・・」
スピラーンが呟く。クー・クラックス・クラン、白人至上主義の秘密結社。黒人差別のみならず、有色人種全体の排撃を主張している過激派集団だった。20世紀初頭ならいざ知らず、このミシシッピーでは未だKKKによる暴行・強姦・殺人事件が多発していたのだ。
スピラーンは手を上げて、降伏の姿勢を見せた。
「神父をどこへ連れて行く気だ!」
バリーがライフルを構えた男たちに、飛びかかろうとした瞬間、彼はライフルで殴り飛ばされた。
「この子に手を出すのは止めろ!」
スピラーンが男のライフルを掴み、銃口を上に向ける。しかし彼もそのライフルによって、頭を殴られる。彼は床に倒れた。
その姿を見たバリーは、よろめきながらもスピラーンに駆け寄ろうとする。
「バリー・・・来ちゃいけない!」
スピラーンの右耳から血が流れ出した。もう一人の男がバリーを蹴り上げようとする。スピラーンはバリーを蹴り上げようとした男の足に飛びついた。男がスピラーンと共に床に叩きつけられる。
「バリー、逃げろ!」
バリーは、言いようのない恐怖を感じた。
「早く行くんだ!」
次のスピラーンの言葉で我に返ったバリーは、扉に向かって走った。ほんの数メートル先の扉にたどり着いた瞬間、背後で銃声が轟いた。


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