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作品名:サイレンス 作者:ぴきにん

第257回   257
受け取った鍵を見る。
「何の鍵だ?」
「デボアの当主だけが入ることが出来る、書庫の鍵だ」
鍵は、単純な造りになっていた。
「こんな鍵で、大丈夫なのか?」
バリーの言葉に、ジャン・デボアは微笑を浮かべる。
「ついて来い」

モビーディックに車椅子を押されたジャン・デボアは、フロアにあったエレベーターに乗り込んだ。
「その鍵を挿せ」
ジャン・デボアは、エレベーターにあった鍵穴を指し示した。言われるがままに、バリーはその鍵を挿し込む。途端にエレベーターが稼動し、地下へ降りた。
地下へ到着し、扉が開くと、少し開けたフロアがあり、一人が通る位の重厚な扉がそびえ立っていた。
「ジャン様、私は此処でお待ちしております」
モビーディックが、ジャン・デボアに一礼をする。ジャン・デボアはそれに頷くと、車椅子をバリーに押させた。
扉には金庫のダイヤルが付いており、ジャン・デボアが数字を合わせる。扉が開き、中へ入ると目の前には広大なホールに、数万冊が蔵書されていた。
「ここが、その書庫なのか?」
バリーが立ち止まり、棚に収められていた書物を仰いだ。
「前へ、進め」
ジャン・デボアの言うがままに、前へ進む。
行き止まりの奥へ辿り着くと、そこには本が立ち並んでいるだけだった。
「ただの本じゃないか」
「”ジャン・クリストフ””マルテの手記””副官騎行”・・・」
ジャン・デボアが、本のタイトルを言い始めた。
「じいさん、何言ってるんだ?」
「もう、忘れたのか?もう一度だけ言う。全て、記憶しろ」
そう言うと、もう一度同じ本のタイトルを言い始めた。全て27冊のタイトルを言い終える。バリーは、それを全て記憶する。
本の前に立ち、覚えた本のタイトルを口にした。
「”ジャン・クリストフ”・・・」
その本を手に取ろうとしたとき、違和感を感じる。それをふと、押してみた。
すると本は、まるでスイッチのように奥へ入っていく。
バリーは、本のタイトルが扉を開ける鍵だと理解し、記憶した27冊のタイトルを順番に押していった。
最後の本を押した時、裏に隠れていた隠し扉が開いた。
それを見た時、バリーは一瞬、言葉を失っていた。
「中へ、入れ」
中へ入ると、古いレンガで造られた狭く、質素な部屋だった。
その壁に、20冊ほどの本が並んでいた。それを手に取ると、一つ一つに鍵穴が付いている。バリーは、ジャン・デボアから受け取った鍵を見た。おもむろに、それを挿し込んでみる。その鍵で、本が開いた。
「ここにある本を、全て読め。だが、ここにある本は、ここから持ち出してはならん」
そう言うと、ジャン・デボアは部屋を立ち去った。
バリーは何も言わず、本を広げ、部屋の中にあった椅子に腰掛けると、本を読み始めた。


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