受け取った鍵を見る。 「何の鍵だ?」 「デボアの当主だけが入ることが出来る、書庫の鍵だ」 鍵は、単純な造りになっていた。 「こんな鍵で、大丈夫なのか?」 バリーの言葉に、ジャン・デボアは微笑を浮かべる。 「ついて来い」
モビーディックに車椅子を押されたジャン・デボアは、フロアにあったエレベーターに乗り込んだ。 「その鍵を挿せ」 ジャン・デボアは、エレベーターにあった鍵穴を指し示した。言われるがままに、バリーはその鍵を挿し込む。途端にエレベーターが稼動し、地下へ降りた。 地下へ到着し、扉が開くと、少し開けたフロアがあり、一人が通る位の重厚な扉がそびえ立っていた。 「ジャン様、私は此処でお待ちしております」 モビーディックが、ジャン・デボアに一礼をする。ジャン・デボアはそれに頷くと、車椅子をバリーに押させた。 扉には金庫のダイヤルが付いており、ジャン・デボアが数字を合わせる。扉が開き、中へ入ると目の前には広大なホールに、数万冊が蔵書されていた。 「ここが、その書庫なのか?」 バリーが立ち止まり、棚に収められていた書物を仰いだ。 「前へ、進め」 ジャン・デボアの言うがままに、前へ進む。 行き止まりの奥へ辿り着くと、そこには本が立ち並んでいるだけだった。 「ただの本じゃないか」 「”ジャン・クリストフ””マルテの手記””副官騎行”・・・」 ジャン・デボアが、本のタイトルを言い始めた。 「じいさん、何言ってるんだ?」 「もう、忘れたのか?もう一度だけ言う。全て、記憶しろ」 そう言うと、もう一度同じ本のタイトルを言い始めた。全て27冊のタイトルを言い終える。バリーは、それを全て記憶する。 本の前に立ち、覚えた本のタイトルを口にした。 「”ジャン・クリストフ”・・・」 その本を手に取ろうとしたとき、違和感を感じる。それをふと、押してみた。 すると本は、まるでスイッチのように奥へ入っていく。 バリーは、本のタイトルが扉を開ける鍵だと理解し、記憶した27冊のタイトルを順番に押していった。 最後の本を押した時、裏に隠れていた隠し扉が開いた。 それを見た時、バリーは一瞬、言葉を失っていた。 「中へ、入れ」 中へ入ると、古いレンガで造られた狭く、質素な部屋だった。 その壁に、20冊ほどの本が並んでいた。それを手に取ると、一つ一つに鍵穴が付いている。バリーは、ジャン・デボアから受け取った鍵を見た。おもむろに、それを挿し込んでみる。その鍵で、本が開いた。 「ここにある本を、全て読め。だが、ここにある本は、ここから持ち出してはならん」 そう言うと、ジャン・デボアは部屋を立ち去った。 バリーは何も言わず、本を広げ、部屋の中にあった椅子に腰掛けると、本を読み始めた。
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