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作品名:サイレンス 作者:ぴきにん

第256回   256
「何だ、その言い方は!?このお方は・・・」
普段は冷静なモビーディックが、声を張り上げる。
「分かってるよ。ジャン・ファビュエール・フォン=デボア。俺の、じいさんだろ?」
バリーは笑みを浮かべた。
「フン。アメリカで育ったら、何故こうも下品な言い方しか出来なくなるのだ?」
はっきりとした口調で、車椅子の老人、ジャン・デボアが応えた。
「嫌味を言えるところを見ると、まだモウロクしていないようだな」
そう言うと、バリーは声を上げて笑うが、ジャン・デボアは、その言葉に何も言わなかった。
「此処に、お前を呼んだ理由は、分かるな?」
バリーの顔から笑みが消え、ジャン・デボアから眼を逸らすと、ソファに腰掛け、煙草をくわえた。
「・・・後継者のことか?」
ジャン・デボアは、小さく頷いた。
「お前が、私の後継者になれ」
煙草に火を点けながら、バリーはその言葉に呆れたような笑いを浮かべた。
「嫌だね」
「何故だ?」
「いくら身内とはいえ、俺は、じいさんと面識は無い。第一、デボアなんて得体の知れない家を継げと言われても、俺にはそんな義務は無い」
一瞬の沈黙が走る。その沈黙を破ったのは、バリーだった。
「何だ、初めて会う孫との、感動の対面でも思っていたのか?」
ジャン・デボアは鋭い眼光を、ずっとバリーに向けていた。
「お笑い草だな。じいさん、今まで何度か世話にはなったが、後継者ともなれば、話は別だ」
それでも、ジャン・デボアは何も言わなかった。ただ黙って、バリーの眼を見ていた。
「じいさん、やっぱりアンタ、モウロクしているようだ。悪いが、帰らせてもらう」
そう言うと、灰皿に煙草を押し付け、ソファから立ち上がった。そのまま扉へ行こうとしたとき、ジャン・デボアが声をかける。
「お前は、欲している筈だ。この”力”を」
その声に、バリーが立ち止まる。
「俺が”力”を欲していると、何故そう思う?」
「お前の”目的”。戦争をしかけようとする全ての”悪”を殲滅させる。そうでは、ないのかね?」
ジャン・デボアの応えに、バリーは息を呑んだ。
「今のお前のやり方では、この世の”悪”を殲滅させることは出来ん」
「じいさん・・・。デボアって一体何なんだ・・・?」
ジャン・デボアは、首からかけていたペンダントを、バリーに手渡した。その先には、鍵がついている。
「デボアとは、この世の”真実”・・・。お前に、この世の”真実”を、教えてやろう・・・」


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