「何だ、その言い方は!?このお方は・・・」 普段は冷静なモビーディックが、声を張り上げる。 「分かってるよ。ジャン・ファビュエール・フォン=デボア。俺の、じいさんだろ?」 バリーは笑みを浮かべた。 「フン。アメリカで育ったら、何故こうも下品な言い方しか出来なくなるのだ?」 はっきりとした口調で、車椅子の老人、ジャン・デボアが応えた。 「嫌味を言えるところを見ると、まだモウロクしていないようだな」 そう言うと、バリーは声を上げて笑うが、ジャン・デボアは、その言葉に何も言わなかった。 「此処に、お前を呼んだ理由は、分かるな?」 バリーの顔から笑みが消え、ジャン・デボアから眼を逸らすと、ソファに腰掛け、煙草をくわえた。 「・・・後継者のことか?」 ジャン・デボアは、小さく頷いた。 「お前が、私の後継者になれ」 煙草に火を点けながら、バリーはその言葉に呆れたような笑いを浮かべた。 「嫌だね」 「何故だ?」 「いくら身内とはいえ、俺は、じいさんと面識は無い。第一、デボアなんて得体の知れない家を継げと言われても、俺にはそんな義務は無い」 一瞬の沈黙が走る。その沈黙を破ったのは、バリーだった。 「何だ、初めて会う孫との、感動の対面でも思っていたのか?」 ジャン・デボアは鋭い眼光を、ずっとバリーに向けていた。 「お笑い草だな。じいさん、今まで何度か世話にはなったが、後継者ともなれば、話は別だ」 それでも、ジャン・デボアは何も言わなかった。ただ黙って、バリーの眼を見ていた。 「じいさん、やっぱりアンタ、モウロクしているようだ。悪いが、帰らせてもらう」 そう言うと、灰皿に煙草を押し付け、ソファから立ち上がった。そのまま扉へ行こうとしたとき、ジャン・デボアが声をかける。 「お前は、欲している筈だ。この”力”を」 その声に、バリーが立ち止まる。 「俺が”力”を欲していると、何故そう思う?」 「お前の”目的”。戦争をしかけようとする全ての”悪”を殲滅させる。そうでは、ないのかね?」 ジャン・デボアの応えに、バリーは息を呑んだ。 「今のお前のやり方では、この世の”悪”を殲滅させることは出来ん」 「じいさん・・・。デボアって一体何なんだ・・・?」 ジャン・デボアは、首からかけていたペンダントを、バリーに手渡した。その先には、鍵がついている。 「デボアとは、この世の”真実”・・・。お前に、この世の”真実”を、教えてやろう・・・」
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