20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ
 ようこそゲストさん トップページへ ご利用方法 Q&A 操作マニュアル パスワードを忘れた
 ■ 目次へ

作品名:サイレンス 作者:ぴきにん

第255回   1980年5月 オーストリア・リリエンフェルト”後継者”
イラン・アメリカ大使館で、マイケル・モラレスの救出が失敗し、仲間のトーマス・パワーズがCIAによって殺害される一ヶ月前、バリーは武器取引の商談で、イタリアに来ていた。
商談が終了し、ローマ・フィウミチーノ空港へ着いた時、彼の目の前に数人の男達が現れた。
彼らはバリーの行く手を、阻んだ。
「何のマネだ?」
バリーは、男達を睨む。だが男達は何も言わず、ただ黙ってバリーを見た。その後ろから、黒い眼帯の男が彼らを割って入った。”モビー・ディック”だった。
「何の用だ?」
バリーは苛立ちを感じながら、モビーディックを睨みつけた。
「バリー様。貴方を、お迎えに上がりました」
いつもとは違う様子だった。バリーは、怪訝な表情を浮かべる。
「何を企んでる?」
その言葉に対して、モビーディックは何も応えなかった。
「貴方を、お連れせよとの命を受けました」
「どこへ連れて行く気だ?」
バリーの言葉を、モビーディックは無視した。
「悪いが、俺は忙しいんでな。話があるなら、今度にしてくれ」
そう言うと、バリーは彼らから離れようとした。だが、すぐさま護衛の男達がバリーを取り囲む。
「全く・・・。ここで争いを起こす気か?」
バリーは男達に対し、身構えた。
「黙って、付いて来い。クソ坊主め!」
背後から、モビーディックが怒鳴った。バリーは溜息を吐きながら、彼を睨みつけた。

先頭をモビーディックが歩き、バリーを取り囲むようにして、男達が周りに就いた。
彼らはイミグレーションを通りすぎ、奥にあったVIP専用通路に入った。
モビーディックを先頭に、何のチェックも受けなかった。
プライベート・ジェットに乗り込み、オーストリア・グラーツ空港に向かった。
その間、何を問いかけても、モビーディックと護衛の男達は何も応えなかった。
「つまらん奴らだ」
バリーは、苛立ちを露にした。

オーストリア・グラーツ空港に着陸し、そこから車で移動。10分ほど走らせると、商業ビルがそびえ立っている。地下駐車場へ入り、そこから屋上のヘリポートへ向かった。
ヘリポートに着くと、ベル407が既にメインローターを回してバリーの到着を待っていた。
護衛の男達、モビーディックとバリーが乗り込み、離陸する。それでも、彼らは何も言わなかった。

1時間ほど飛行し、ヘリは山の中へ降下を始める。
「ここは、どこだ?」
「リリエンフェルトの南東」
バリーの問いに対し、モビーディックは淡々と応えるだけだった。

やがて山の中に、整備された広大な庭園が現れた。
庭園の中に、一本の道が通っている。その行き着く先に、彫刻などが施されたバロック建築様式の屋敷が見えてきた。
エントランスの前でヘリが着陸すると、十数人の執事とメイドが、彼らを出迎えた。
護衛の男達は、エントランスより先には来なかった。
「ついて来い」
そう言うと、モビーディックはバリーを案内する。
屋敷内は、17世紀に建てられた物で、華美な装飾に施されているような様相だったが、中は意外に質素にまとめられていた。
二階に上がり、バリーを応接室に招いた。
「ここで、お待ちください」
モビーディックが深々と頭を垂れる。
そして、数分で”その男”が現れた。
扉が開くと、モビーディックに押された車椅子の老人が入ってきた。
車椅子には、点滴と酸素吸入器が取り付けられている。
年老いていたものの、男は鋭い眼光で、バリーを見上げた。
「お前が、バリーか?」
バリーは笑みを浮かべ、その男と同じ透き通った水色の瞳で、彼を見据えた。
「まだ、生きてやがったのか。じいさん・・・」


← 前の回  次の回 → ■ 目次

■ 20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ トップページ
アクセス: 1114