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作品名:サイレンス 作者:ぴきにん

第254回   254
暗闇の中、突然目の前に、大きな水槽が現れた。
その中に、金色の髪の女が投げ込まれた。
全裸の女は、眉間にしわを寄せ、苦痛の表情を浮かべる。
「助けて」
女の声が聞こえた。
「待ってろ!」
バリーは女を助けるために、辺りを見回した。
だが、何も無い。
バリーは己の拳で、水槽のガラスを殴った。
「待ってろ、今、助けてやる!」
何度もガラスを殴る拳から、血が噴出した。
その間にも、女は息が出来ない苦しさに、もがいた。
何度もガラスを殴る拳から、骨が砕ける音がした。
「クソ!」
両手に、骨が砕けた激痛が走る。
「死ぬな、必ず助けてやる!」
バリーは、その水槽に体当たりする。
何度もアタックをかけるが、水槽のガラスは、びくともしなかった。
その前に、バリーは己の無力さを感じた。
女は、目を閉じる。
そのまま、動かなくなった。
「駄目だ、死ぬな!」
その時、背後に、気配を感じた。
振り返ると、男が立っていた。
だが、顔は見えない。
バリーは男の傍に近寄ると、その前で跪いた。
「頼む、彼女を助けてくれ!」
バリーは、男の足に縋った。
「彼女を助けてくれるのなら、俺は何でもする!」
男は何も言わず、ただバリーを見つめた。
バリーの瞳から、涙が零れ落ちる。
男に、もう一度縋った。
「俺の命をくれてやる。だから、アンを・・・アンジェリアを助けてくれ!」
その言葉に、男の手から銃が現れる。
男はそれを、バリーの額に向けた。
その瞬間、男の顔に光が当たった。
バリーは、古くから見慣れた男の顔を見て、驚愕する。
「お前の、望み通りにしてやる」
聞き慣れた低い声と共に、男は何の躊躇いも無く、トリガーを引いた。

乾いた銃声と共に、バリーは眼を見開いた。
そこには、白い天井があるだけだった。
乱れた呼吸の音が、自分の耳に響く。
バリーは上体を起こした。
「どうしたの?」
隣から、女の声がした。
背中に、女の冷たい指が触れる。
見ると、髪を下ろした、裸のサラがいた。
「うなされてたわ。悪い夢でも、見たの?」
それが夢だったことを、バリーは理解した。
「大丈夫・・・?」
サラは、バリーの頬に触れた。
バリーは、その手を掴む。
サラは、疲れきったバリーの顔を見た。
「少し、外の空気を吸ってくる・・・」

外のバルコニーに出た。

あの時、夢の中で自分を撃った男。
男の顔が、目の前に蘇った。
父親の、ジョナサン・タウバー。
バリーは、下唇を噛み締めた。
今頃になって、悔しさが戻ってきた。

夜空には、満月が浮かんでいる。
それを見上げると、バリーは笑みを浮かべた。
「待ってろ・・・。もう少しだ。待ってろよ、アン・・・」


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