暗闇の中、突然目の前に、大きな水槽が現れた。 その中に、金色の髪の女が投げ込まれた。 全裸の女は、眉間にしわを寄せ、苦痛の表情を浮かべる。 「助けて」 女の声が聞こえた。 「待ってろ!」 バリーは女を助けるために、辺りを見回した。 だが、何も無い。 バリーは己の拳で、水槽のガラスを殴った。 「待ってろ、今、助けてやる!」 何度もガラスを殴る拳から、血が噴出した。 その間にも、女は息が出来ない苦しさに、もがいた。 何度もガラスを殴る拳から、骨が砕ける音がした。 「クソ!」 両手に、骨が砕けた激痛が走る。 「死ぬな、必ず助けてやる!」 バリーは、その水槽に体当たりする。 何度もアタックをかけるが、水槽のガラスは、びくともしなかった。 その前に、バリーは己の無力さを感じた。 女は、目を閉じる。 そのまま、動かなくなった。 「駄目だ、死ぬな!」 その時、背後に、気配を感じた。 振り返ると、男が立っていた。 だが、顔は見えない。 バリーは男の傍に近寄ると、その前で跪いた。 「頼む、彼女を助けてくれ!」 バリーは、男の足に縋った。 「彼女を助けてくれるのなら、俺は何でもする!」 男は何も言わず、ただバリーを見つめた。 バリーの瞳から、涙が零れ落ちる。 男に、もう一度縋った。 「俺の命をくれてやる。だから、アンを・・・アンジェリアを助けてくれ!」 その言葉に、男の手から銃が現れる。 男はそれを、バリーの額に向けた。 その瞬間、男の顔に光が当たった。 バリーは、古くから見慣れた男の顔を見て、驚愕する。 「お前の、望み通りにしてやる」 聞き慣れた低い声と共に、男は何の躊躇いも無く、トリガーを引いた。
乾いた銃声と共に、バリーは眼を見開いた。 そこには、白い天井があるだけだった。 乱れた呼吸の音が、自分の耳に響く。 バリーは上体を起こした。 「どうしたの?」 隣から、女の声がした。 背中に、女の冷たい指が触れる。 見ると、髪を下ろした、裸のサラがいた。 「うなされてたわ。悪い夢でも、見たの?」 それが夢だったことを、バリーは理解した。 「大丈夫・・・?」 サラは、バリーの頬に触れた。 バリーは、その手を掴む。 サラは、疲れきったバリーの顔を見た。 「少し、外の空気を吸ってくる・・・」
外のバルコニーに出た。
あの時、夢の中で自分を撃った男。 男の顔が、目の前に蘇った。 父親の、ジョナサン・タウバー。 バリーは、下唇を噛み締めた。 今頃になって、悔しさが戻ってきた。
夜空には、満月が浮かんでいる。 それを見上げると、バリーは笑みを浮かべた。 「待ってろ・・・。もう少しだ。待ってろよ、アン・・・」
|
|