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作品名:サイレンス 作者:ぴきにん

第251回   251
ヴァージニア州マクレーンにある自宅へ戻ったとき、エドナー・ガーツは、その異変に気付いた。
背広の中に手を入れ、銃を取り出す。
そっと気配を殺し、エントランスの扉の前に立った。
ノブを回すと、鍵がかかっていない。
そっと中へ入り、殺気のする方へ警戒しながら足を勧進める。
ダイニングへ足を踏み入れた瞬間、ガーツの背に緊張が走った。
テーブルの上に一人、キッチンのカウンターに一人、そして床に一人の男が死んでいた。
皆、争った跡は無く、テーブルの上にいた男は背中からキッチンナイフで刺され、キッチンのカウンターに倒れていた男は、首が180度捻られ、床に倒れていた男はカービングナイフで心臓を一突きだった。
恐らく、彼らは自分を殺しに来た、CIAの暗殺者だった。
だが、皆鮮やかな手口で殺されている。
ガーツは銃を構えながら、辺りを見た。人の気配を、探ろうとした。
隣のリビング入ったとき、彼の後頭部に、何かが当たるのを感じた。それが銃口であることは、経験と”勘”で分かった。
「誰だ・・・?」
ガーツが、額から冷たい汗を流しながら言った。
「遅かったな。待ちくたびれたぞ」
その声に、ガーツの口元が緩む。
「タウバーか・・・。相変わらず、しぶといな」
「アンタに、話があってな。それでここへ来てみれば、アンタを殺しに来た殺し屋達が、ウヨウヨしてるじゃないか。驚いたよ」
頭に向けた銃口を、バリーはゆっくりと下ろした。それに気付き、ガーツは振り返って、バリーの顔を見る。
「さすがだな。CIAの殺し屋を、こうも鮮やかに殺っちまうとは」
「こいつらが、間抜けなだけだ」
バリーの応えに、ガーツは笑みを浮かべた。
「で、話とは何だ?ついに、俺を殺しに来たという訳か?」
バリーがマイケル・モラレスを救出しようとした時点で、彼はCIAを裏切った存在だった。暗殺を余儀なくされるのは、当然と言えた。
ガーツは、己の責務を果たしていた。
バリーがここへ来た理由は、仲間のパワーズを殺した報復として、ガーツを殺しに来たのだ。
だが、バリーの答えは、意外なものだった。
「いいや。アンタを、助けに来たんだ」
「助けに・・・?」
ガーツの眉間に、深い皺が刻まれた。
「俺と共に来い。俺の、ビジネス・パートナーになれ」
「お前・・・何を言ってるんだ・・・?」
バリーもガーツも、CIAから命を狙われる存在になったのだ。
にも関わらず、バリーは”自分と手を組め”と言ってきたのだ。
「この状況で、そんな事が言えるとは。お前は自分の状況が、分かっていないようだな」
「それは、アンタもだ。アンタもCIAが狙う、暗殺のリストに載ったようだからな」
ガーツは、バリーの透き通った水色の眼を見た。
「アンタを救えるのは、この俺だけだ」
バリーの言葉に、ガーツが”ある事”に気付いた。
「まさか・・・」
力を失った筈のバリーが、今でも”カード”を握っているということは、答えは一つしかなかった。
「まさか、デボアの力を・・・?」
その言葉に、バリーは小さく頷いた。
「じいさんが、しつこくてな」


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