前日から一睡もしないまま、ジョージ・スピラーンがその現場に着いたのは、その日の午後だった。 現場に着くと、まだ遺体があり、市警による現場検証が行われていた。 ジョージは何重にも巻かれた「KEEP OUT(立入り禁止)」のテープを潜り抜け、ブルーシートで周囲を覆われていた、殺害現場に入った。 「酷いな」 そのむせ返る血の臭いに、ジョージは思わず腕で鼻を覆った。 かつて人間であったであろう肉の塊が、そこかしこに散らばっていた。辺りを見ると、市警の若手刑事が吐き気を”もよおした”のか、現場を離れる者もいるほどだった。 殺害現場に入ったジョージを見て、一人の男が彼に近寄った。男は市警、殺人課の刑事で、彼を案内した。 「見てくれ。これが、アンタ宛てのメッセージだ」 それを見た瞬間、ジョージの額から汗が流れ落ちる。 「To FBI Special Agent George Spilane,Thomas Powers Killed murders(FBI特別捜査官ジョージ・スピラーンへ。トーマス・パワーズを殺した犯人達だ)」 フォード・コブラの車体に、彼らの血で書かれた文字だった。 「一人目は、でかいナイフで腹を刺された後、へそから首まで割かれている。二人目は両腕と両足を切り落とし、最後には首を落とされた。三人目は、腹を今度は真一文字に割かれ、内蔵を生きたまま引き抜かれた。これほど残忍に殺してきたにも関わらず、コブラの車内で死んだ四人目は、脳天に銃弾一発だけだ」 彼を案内した刑事が、殺害された男達の状況説明をした。その言葉に、ジョージは刑事の顔を見る。 「四人目だけ?」 ジョージの問いに、刑事が頷いた。 四人目は、フォードのナビシートに座り、受話器を握ったまま絶命している。 「このコブラの名義は?」 それを見ながら、ジョージが刑事に言った。刑事は手帳に書いたメモを見ながら、それに応える。 「名義は、ジョナサン・タウバー」 ジョージは、その名義に納得していた。偽名を使ったとはいえ、その犯人は自分にメッセージを投げかけている。 「クソ・・・」 ジョージは、そう小さく呟き、市警の刑事に自動車電話の、最後の発信履歴を調べてくれと言った。 翌日、殺された4人の身元が判明し、ジョージはコロラド州デンバーに飛び、ファーベラ児童施設のシスターに、4人の写真を見せた。 彼らが、トーマス・パワーズを殺害した犯人なのか。 事件を目撃していたシスター達は、その4人の特徴をよく覚えており、惨殺された彼らは、間違いなくトーマス・パワーズを殺害した犯人達だった。
後日、その自動車電話からの最後の発信履歴が判明する。
ラングレー、CIA本庁に在籍している、秘密作戦室セドリック・マッコーリーだと分かった。
「バリー、お前は俺に、一体何を告げようとしているんだ・・・?」
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