日も暮れ、辺りが暗闇に包まれ始めている。ロレーナが椅子から立ち上がり、窓の外を見た。 「二人とも、遅いわね」 ロレーナが心配そうに窓を見ながら言った。その姿を見たバリーが立ち上がると、 「僕、教会に行ってきます」 と言いながら、ロレーナの制止も聞かず、アンジェリアを頼みますと言い、家を出た。
暗い道路を10分ほど走ると、木々に囲まれた教会が見えてきた。あちこちに修理の跡があり、過酷な状況を生き抜いてきた教会ということが窺える。 バリーは教会の前で自転車を停めると、自分の背丈よりも大きな扉を開け、中へ入った。 歩を進めるたびに、床が低い音を立てている。真正面にはイエス・キリストが十字架にはりつけられていた。それを見上げるバリー。ふと気配を感じ、祭壇の横手にある部屋に入った。そこには机と椅子があり、聖書や色々な本が所狭しと並んでいる。 スピラーン神父の執務室だった。 その机の上に、二枚の写真があった。 一枚は若き日のスピラーン神父と、ロレーナ。もう一枚はフットボールチームが写った写真だった。バリーはその写真を手にする。誰だろうと思った。 「誰だね?」 バリーの背後から声がした。少し驚いたが、それがすぐにスピラーン神父と分かり、振り返った。 「バリーじゃないか」 スピラーン神父はバリーがこの時間に、この場所に居ることが、ただ事ではなかったが、その状況をすぐに理解した。 「ああ、その写真は私だよ」 バリーが手にしていた写真に気付き、彼は説明を始めた。 「戦争前に、フットボールのチームに居てね。これが私で、その隣にいるのが親友だった男だ」 若きスピラーン神父の隣で微笑んでいる男がいる。利発そうで、端正な顔立ちの好青年だった。 「だった・・・?」 「ああ。彼の名はヘイリー・ステニス。彼は私と違い、ここの出来が良かったから、イェール大のクォーターバックになったんだ」 バリーは変わった名前だと思った。 「だけど、第二次世界大戦があって、私もヘイリーも戦争に志願した。ノルマンディで偶然再会してね。エプソム作戦でシェルブールが陥落する直前、彼は私の目の前で撃たれたんだ」 バリーは何も言わず、スピラーン神父の言葉を待った。 「彼が死ぬ直前、笑いながらこう言ったよ。お互いの息子を、イェールのフットボールチームに入れようってね」 スピラーン神父は、バリーが手にしていた写真を見つめた。 「昔から二人の約束だったんだ。お互いの息子を、当時最強だったイェール大のフットボールチームの選手にしようって。戦争がなければ、そんな約束も、しなくて済んだんだがね・・・」 「じゃ、ジョージもイェール大に行くの?」 「本人は嫌だと言っているけどね」 「僕が行きます!」
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