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作品名:サイレンス 作者:ぴきにん

第248回   248
9月ヴァージニア州ラングレー。

ここ数日前から、エドナー・ガーツは自分をつけてくる、誰かの気配を感じ取っていた。
その正体を、彼は薄々勘付いていた。
自分に尾行をつけさせたのは、恐らくCIA秘密作戦チームのメンバー、セドリック・マッコーリーであろう。

前月に、バリー・タウバーの「タウバー・ファーム」コントラクター、トーマス・パワーズを殺害した、4人の男たちが、突如として行方が分からなくなってしまった。

イランへの武器輸出を禁じていたアメリカは、非合法にイランまでの武器輸出ルートを築いた。
全てはバリー・タウバーの手によって。
だが、彼はKCIAの依頼を引き受け、CIAが消そうとしていたマイケル・モラレスを救出しようとした。結果的に、それは失敗に終わったが。
その事実を知ったCIAガーツの所属する秘密作戦チームは、バリー・タウバーを始めとする、「タウバー・ファーム」のメンバー全ての暗殺計画を企てる。
そしてアメリカ本土に姿を現した、トーマス・パワーズの暗殺が成功した。完全に、ファーベラ児童施設に来ていた、地上げ屋との諍いに巻き込まれて死んだ事になっている。
誰も、パワーズの死に疑問を抱くものなど、いないのだ。

そのパワーズを殺害した、4人の男たちの行方が分からなくなった。
それを知っているのは、秘密作戦チームのガーツと、マッコーリーのみ。
「この私が、疑われるとはな・・・」
バックミラーを見ながら、自分の車をつけてくる車を見て、ガーツは呟いた。

その夜、人間の気配が全く消えたラングレー郊外の廃工場に、バリーとクルーエル、ホアとマッカビーが、パイプ椅子に裸で縛られた、4人の男たちを見ていた。
椅子に縛られた男たちは恐れを抱いた目で、彼らを見上げた。
「こいつらが、トムを殺したんだ!」
マッカビーが、何度も男たちを殴っていた。バリーは、それを静観している。
「こいつらを、殺っちまおう!」
いかなる戦場でも沈着冷静なクルーエルが、珍しく鼻息を荒くした。
「こいつらはどうせ、CIAの犬だ!殺ろう!」
平和主義者のホアでさえ、怒りに燃えた復讐で、我を忘れていた。
「バリー!」
彼らは、一様にバリーに懇願した。男たちを、俺に殺らせてくれと、息巻いた。

「静かに」

一瞬、低く、よく通る声に、そこにいた誰もが萎縮した。
彼らは、バリーを見た。
彼の眼には、怒りも何も浮かんでいなかった。
ただ、静かな安らぎを湛える眼だった。
「デイビッド、二人を連れて、外へ出ていろ」
バリーは振り返りもせず、クルーエルに言った。
「お前、何をする気だ・・・?」
「早くしろ」
クルーエルはバリーを見た。
彼はカンボジア・スヌールで見た、バリーの後姿を思い出した。
クルーエルは、何も言わずホアとマッカビーを連れ外に出ると、扉を閉めた。
それを見送ったバリーは、ネクタイを緩め、椅子に縛られた、男たちを見る。
そしてブリーフケースから、研ぎ澄まされたマチェットナイフ(山刀)を取り出した。
彼らの顔に、恐怖が浮かび上がる。

「地獄へ行くのは、俺一人で充分だ・・・」


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