7月、アメリカ・コロラド州デンバー。 イーストコルファクス・アベニューからユーインタ・ストリートを北に入った所に、ファーベラ児童施設が併設されてあった、ルーテル教会があった。 トーマス・パワーズはトラックを教会の前に停めると、目の前には、既に子供たちが教会の庭に集まっていた。 「よう、クソガキども。待たせたな!」 トラックから降りると、子供たちが集まってくる。彼らは一様に、パワーズに抱きついた。 トラックの荷台の扉を開けると、中から冷気が溢れ出た。 「ほら、お待ちかねのアイスキャンディーだ!持ってけ!」 パワーズが荷台に入り、箱の中に入っていたアイスキャンディーを取り出すと、その前に群がった子供たちにバラ撒いた。 子供たちは、皆笑顔でアイスキャンディーを取った。それを見ていた、二人のシスターも、満面の笑みを浮かべた。 全てが、歓喜に包まれていた。 そこへ、一台のフォードが停まり、中から4人の男たちが降り立つ。 誰もが異質と感じる、その男たちを見た子供たちの顔から、笑顔が消えていった。 凍りついた雰囲気を感じ取り、パワーズがトラックの荷台から出る。そして、男たちの前に立ちはだかった。 「そこを、どけ」 パワーズよりも、遥かに体格のいい男たちが、鋭い眼でパワーズを睨みつける。以前より、この教会のシスターに、地上げ屋から酷い嫌がらせを受けていることを聞いていたパワーズは、即座に彼らが、その地上げ屋だと気付いた。 「今日は、俺が話してやる。何か話があるなら、俺に言え」 パワーズは物怖じせず、男たちを睨み返した。 その睨み合いに、緊張の糸が張り詰める。それを破ったのは、パワーズだった。 「お前ら、ケツの穴みてえな顔つきだな!」 その言葉に、男の一人がパワーズに、拳を繰り出した。 だが気付いたとき、男は宙を舞い、地面に叩きつけられた。その技に、男たちも、周りにいた子供たちも息を呑んだ。 「どうした、それだけか?」 パワーズが笑みを浮かべながら、男たちへけしかけた。それに、もう一人の男が飛び掛ったが、結果は同じだった。 「お前ら、もう二度とこの教会には来るな!」 だが、パワーズに投げ飛ばされた男の一人が、声を上げて哄笑する。パワーズは、怪訝な表情を浮かべた。 「何が、可笑しいんだ?」 「この教会に用があって来たんじゃねえ。お前に”用”があって来たんだ」 その言葉に、パワーズの身体に緊張が走った。 この男たちは、地上げ屋などではなく、自分を殺しに来たのだ。 「しまった!」 パワーズが背後に気配を感じ、振り返った瞬間、一発の銃声が鳴り響いた。
ケイマン諸島。 バリーは海を眺めながら、釣りを愉しんでいたとき、その訃報を聞いた。 「トムが・・・トーマスが、死んだ!」
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