20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ
 ようこそゲストさん トップページへ ご利用方法 Q&A 操作マニュアル パスワードを忘れた
 ■ 目次へ

作品名:サイレンス 作者:ぴきにん

第246回   246
7月、アメリカ・コロラド州デンバー。
イーストコルファクス・アベニューからユーインタ・ストリートを北に入った所に、ファーベラ児童施設が併設されてあった、ルーテル教会があった。
トーマス・パワーズはトラックを教会の前に停めると、目の前には、既に子供たちが教会の庭に集まっていた。
「よう、クソガキども。待たせたな!」
トラックから降りると、子供たちが集まってくる。彼らは一様に、パワーズに抱きついた。
トラックの荷台の扉を開けると、中から冷気が溢れ出た。
「ほら、お待ちかねのアイスキャンディーだ!持ってけ!」
パワーズが荷台に入り、箱の中に入っていたアイスキャンディーを取り出すと、その前に群がった子供たちにバラ撒いた。
子供たちは、皆笑顔でアイスキャンディーを取った。それを見ていた、二人のシスターも、満面の笑みを浮かべた。
全てが、歓喜に包まれていた。
そこへ、一台のフォードが停まり、中から4人の男たちが降り立つ。
誰もが異質と感じる、その男たちを見た子供たちの顔から、笑顔が消えていった。
凍りついた雰囲気を感じ取り、パワーズがトラックの荷台から出る。そして、男たちの前に立ちはだかった。
「そこを、どけ」
パワーズよりも、遥かに体格のいい男たちが、鋭い眼でパワーズを睨みつける。以前より、この教会のシスターに、地上げ屋から酷い嫌がらせを受けていることを聞いていたパワーズは、即座に彼らが、その地上げ屋だと気付いた。
「今日は、俺が話してやる。何か話があるなら、俺に言え」
パワーズは物怖じせず、男たちを睨み返した。
その睨み合いに、緊張の糸が張り詰める。それを破ったのは、パワーズだった。
「お前ら、ケツの穴みてえな顔つきだな!」
その言葉に、男の一人がパワーズに、拳を繰り出した。
だが気付いたとき、男は宙を舞い、地面に叩きつけられた。その技に、男たちも、周りにいた子供たちも息を呑んだ。
「どうした、それだけか?」
パワーズが笑みを浮かべながら、男たちへけしかけた。それに、もう一人の男が飛び掛ったが、結果は同じだった。
「お前ら、もう二度とこの教会には来るな!」
だが、パワーズに投げ飛ばされた男の一人が、声を上げて哄笑する。パワーズは、怪訝な表情を浮かべた。
「何が、可笑しいんだ?」
「この教会に用があって来たんじゃねえ。お前に”用”があって来たんだ」
その言葉に、パワーズの身体に緊張が走った。
この男たちは、地上げ屋などではなく、自分を殺しに来たのだ。
「しまった!」
パワーズが背後に気配を感じ、振り返った瞬間、一発の銃声が鳴り響いた。

ケイマン諸島。
バリーは海を眺めながら、釣りを愉しんでいたとき、その訃報を聞いた。
「トムが・・・トーマスが、死んだ!」


← 前の回  次の回 → ■ 目次

■ 20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ トップページ
アクセス: 1114