1980年6月、ワシントン・FBIヘッドクウォーター(本部)。
シカゴから戻った特別捜査官ジョージ・スピラーンは、デスクに座るや否や、ある男から呼び出しを食らっていた。 同じHQ内に存在する、諜報部の特別捜査官ポール・D・リブキンにである。犯罪捜査部に所属していた彼は、リブキンに呼び出される理由を、薄々感じ取っていた。 行方不明になっていた、かつての親友バリー・タウバーの捜査を続けていた為に、彼に呼び出されることになったのだろう。 4年前、バリーとされた焼死体をシカゴ市警で確認したとき、前日にそれを見に来ていたFBIの捜査官がいた。 それが、ポール・リブキンである。 バリーとリブキンの間に、一体何があったのか。 捜査が行き着くところ、全てが”機密”にぶち当たり、突き止めることは出来なかったが、一つだけ、解明したことがあった。 食品輸入商ではなく、バリーは兵器商となっていた。
一体、何のために?
バリーは陥落寸前のベトナム・サイゴン、アフガニスタンに何度も飛んでいた。その後の足取りは、分かっていない。 恐らく、動いているのだとすれば、偽造パスポートを使っているのだろう。 いずれにせよ、彼は自ら進んで、”闇”に足を踏み入れたのだ。 その”答え”を、ポール・リブキンが握っている。 それを確かめるために、ジョージはリブキンが呼び出したオフィスへ向かった。
諜報部へ入り、窓際にあったオフィスのドアに来ると、P・リブキンの名を確認し、ドアをノックした。 「誰だ?」 中から、声が聞こえた。 「犯罪捜査部の、ジョージ・スピラーンです」 「入りたまえ」 ジョージはノブを回し、中へ入った。 中へ入ると、デスクがあり、その前にパイプ椅子が一脚あるだけの、簡素なオフィスだった。 リブキンは手で、そのパイプ椅子を勧めると、ジョージが深く腰掛け、足を組んだ。 「呼び出して、すまなかったね。君に来てもらったのは、少し確認したいことがあったからなんだ」 リブキンが言った。彼は煙草を吸いながら、立ち上がると、ジョージにも煙草を勧めた。彼は差し出された煙草を一本取り、同じように差し出された火を点けた。 「確認したいこと?」 その理由に気付いてはいたが、ジョージはそれを敢えて聞いた。リブキンはデスクに腰掛けると、ジョージの眼を見据えながら言った。 「君が今、捜査を続けている事件についてだ」 「事件?私は今、3件の事件を抱えています。どの事件ですか?」 リブキンは煙草を深く吸うと、煙をゆっくりと吐き出しながら、それに応えた。
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