新米家であり、国民を弾圧し続けた国王・パフラヴィーを追放し、ホメイニを筆頭に革命を起こし、イスラム共和制国家の体制を取った。君主制中心のアラブ諸国は、これに警戒感を露にする。 「そりゃ、周辺諸国は警戒するだろうよ。革命の波が、自分の国に波及しかねないんだからな」 バリーが言った。 「タダでさえ、周辺諸国は警戒してる中、イランに核が持ち込まれたとなれば、一触即発になりかねない。イラン軍内部の統制も乱れている中、今戦争が起これば、イランは負けるからな」 「核を見つけて、イランはそれを、使うつもりだったのでは?」 クラッキオーロが、また問いかけた。 「その可能性もある。いずれにせよ、持ち込まれた核を捜し出そうと、彼らは大使館を占拠したんだ」 「だが、誰が核を持ち込んだ情報を持っているのか、自白させることが出来なかった・・・という訳か」 バリーが、また頷いた。 パフラヴィー国王統制するイランに、常に内政干渉を続けていたアメリカは、この革命に危機感を抱いていた。 そこで、ソ連から北朝鮮を経由して、核を持ち込ませる。 「それだけで、戦争の”火種”は出来る。アメリカとしちゃ、一石二鳥だ。奴らは、共和制国家が気に入らない。それが戦争で滅んでくれれば、幸いだ。しかも、戦争が起きれば、武器も売れる」 クラッキオーロは、死んだモラレスの顔を見た。 「この男が生きていれば、アメリカにとって脅威となる。KCIAが彼を助けようとしていたのも、アメリカが、いつ自分たちに牙を向いてもいいように、保険をかけたということだな・・・」 「そういう事だ。おまけに、このイーグル・クロー作戦を失敗させれば、CIAにとって邪魔な存在だったジミー・カーターも失脚させられる。チェック・メイトだ」 クラッキオーロは、ジープの横で立ちすくんだ。 「で、これからどうするんだ?」 バリーが、クラッキオーロに問いかけた。彼は、持っていたSIG-P226を掴んでマガジンを取り出し、弾丸の残存数を確認した。 「軍に戻る」 「正気か?」 クルーエルが、割って入った。バリーは、それを制止させる。 「元より、承知の上だ。殺された部下の為にも、ここで逃げる訳には行かない」 バリーはポケットからキーを取り出すと、クラッキオーロに投げた。 「ジープの鍵だ。使え。中に食料と、ガソリン、武器もある」 キーを受け取ったクラッキオーロは、ジープに乗り込み、笑みを浮かべながらバリーの顔を見た。 「アンタ、タダのビジネスマンにしては、えらく事情通だな」 「ビジネスをするには、まずインテリジェンス(情報)が必要だからな。情報を沢山仕入れ、そこで必要なものだけを厳選し、”あらすじ”を構築していく」 「頭がイイな」
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