20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ
 ようこそゲストさん トップページへ ご利用方法 Q&A 操作マニュアル パスワードを忘れた
 ■ 目次へ

作品名:サイレンス 作者:ぴきにん

第242回   242
新米家であり、国民を弾圧し続けた国王・パフラヴィーを追放し、ホメイニを筆頭に革命を起こし、イスラム共和制国家の体制を取った。君主制中心のアラブ諸国は、これに警戒感を露にする。
「そりゃ、周辺諸国は警戒するだろうよ。革命の波が、自分の国に波及しかねないんだからな」
バリーが言った。
「タダでさえ、周辺諸国は警戒してる中、イランに核が持ち込まれたとなれば、一触即発になりかねない。イラン軍内部の統制も乱れている中、今戦争が起これば、イランは負けるからな」
「核を見つけて、イランはそれを、使うつもりだったのでは?」
クラッキオーロが、また問いかけた。
「その可能性もある。いずれにせよ、持ち込まれた核を捜し出そうと、彼らは大使館を占拠したんだ」
「だが、誰が核を持ち込んだ情報を持っているのか、自白させることが出来なかった・・・という訳か」
バリーが、また頷いた。
パフラヴィー国王統制するイランに、常に内政干渉を続けていたアメリカは、この革命に危機感を抱いていた。
そこで、ソ連から北朝鮮を経由して、核を持ち込ませる。
「それだけで、戦争の”火種”は出来る。アメリカとしちゃ、一石二鳥だ。奴らは、共和制国家が気に入らない。それが戦争で滅んでくれれば、幸いだ。しかも、戦争が起きれば、武器も売れる」
クラッキオーロは、死んだモラレスの顔を見た。
「この男が生きていれば、アメリカにとって脅威となる。KCIAが彼を助けようとしていたのも、アメリカが、いつ自分たちに牙を向いてもいいように、保険をかけたということだな・・・」
「そういう事だ。おまけに、このイーグル・クロー作戦を失敗させれば、CIAにとって邪魔な存在だったジミー・カーターも失脚させられる。チェック・メイトだ」
クラッキオーロは、ジープの横で立ちすくんだ。
「で、これからどうするんだ?」
バリーが、クラッキオーロに問いかけた。彼は、持っていたSIG-P226を掴んでマガジンを取り出し、弾丸の残存数を確認した。
「軍に戻る」
「正気か?」
クルーエルが、割って入った。バリーは、それを制止させる。
「元より、承知の上だ。殺された部下の為にも、ここで逃げる訳には行かない」
バリーはポケットからキーを取り出すと、クラッキオーロに投げた。
「ジープの鍵だ。使え。中に食料と、ガソリン、武器もある」
キーを受け取ったクラッキオーロは、ジープに乗り込み、笑みを浮かべながらバリーの顔を見た。
「アンタ、タダのビジネスマンにしては、えらく事情通だな」
「ビジネスをするには、まずインテリジェンス(情報)が必要だからな。情報を沢山仕入れ、そこで必要なものだけを厳選し、”あらすじ”を構築していく」
「頭がイイな」


← 前の回  次の回 → ■ 目次

■ 20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ トップページ
アクセス: 9